vol.59「欧州委がアップルLightning経済圏解体にメス」
vol.59「欧州委がアップルLightning経済圏解体にメス」
【今週のトピックス】
「欧州委員会は2021年9月23日(現地時間)、電子機器の充電ポート(端
子、コネクター)をUSBの「Type-C(USB-C)」コネクターに統一する無
線機器指令(「Radio Equipment Directive」)の改正案を発表した。
欧州議会や欧州理事会の立法手続きを経て採択されれば、採択日から24カ
月の移行期間内に充電ポートをType-Cにする必要がある。(中略)
この改正案の影響を大きく受けるのが、「Lightning」コネクターを採用
している米Apple(アップル)のスマートフォン「iPhone」だ。(中略)
欧州委員会がType-Cへの統一を図るのは、充電器や充電ケーブルの無駄
を省き、環境負荷低減を図るためである。廃棄された未使用の充電器は毎
年1万1000t(トン)になると推定されるという。加えて、消費者の利便性
の低下やコスト増大を抑制する狙いがある。」
出所)根津 禎「iPhoneに逆風、充電口を『USB Type-C』に統一 欧州委
が法案」『シリコンバレーNextレポート 日経クロステック』2021年9月28日、
電子版(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00141/092700137/
閲覧日:2021年12月19日)
要求元サイドが差別化のためと称して原材料・部品の独自仕様に拘るのに
対し、調達購買サイドはコスト低減のため標準化を図るという構図と同じ
ケースです。
記事ではアップルが独自仕様のLightningに拘るのは、第三者がiphone
の周辺機器を販売するには、周辺機器の相互接続性を担保するという名目
で同社の認証プログラムに加入する必要があり、アップルは周辺機器メー
カからライセンス料などの収入を得るという「Lightning経済圏」を構築
している事が一つの要因と指摘しています。
オープンな規格でデファクトスタンダードを獲るか、独自規格で囲い込む
かは規格戦略の分かれ目でありますが、協力者の多いオープンな規格戦略
の方に一日の長がある様に考えられます。iphoneの様な非常に強力な商品
が無い限り、独自規格で一定規模の経済圏を作る事は難しいでしょう。
近年は圧倒的な経済圏を構築するプラットフォーマービジネスへの行政の
目が厳しくなっており、折角、苦労して経済圏を構築しても、この様に行
政から規制が掛けられ、それを解体させられるリスクも出てきています。
ユーザへの価値の無い方法でユーザを囲い込む方法は非公正な取引手法と
見なされる様になっていると言えます。
調達購買担当の立場としては、差別化のためとして要求元がユーザの利益
につながらない安易な独自仕様を示してきた時には、
1. コスト上昇要因
2. 製品普及の阻害要因となる可能性
3. 例え成功したとしても、非公正な取引手法として活用できなくなるリ
スク
を指摘、できる限り標準的なモノの組み合わせでユーザへの価値提供・差
別化を図る様に誘導すべきと考えます。
2022.1.21