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vol.163「制約がヒット商品を生む。スズキに学ぶ商品開発・開発購買」

週刊 戦略調達
  【今週のトピックス】  今回は開発購買のヒントになりそうなスズキの強さの秘密を解明する記事を紹介します。 「ジムニーの価格は160万円台から。軽自動車サイズで小さいが、トラックで採用される頑丈な構造を備えた本格的な四輪駆動車だ。荒れた山道で横転してボディーが壊れても走行可能という規格 ...
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vol.163「制約がヒット商品を生む。スズキに学ぶ商品開発・開発購買」

 

【今週のトピックス】

 
今回は開発購買のヒントになりそうなスズキの強さの秘密を解明する記事
を紹介します。


「ジムニーの価格は160万円台から。軽自動車サイズで小さいが、トラッ
クで採用される頑丈な構造を備えた本格的な四輪駆動車だ。荒れた山道で
横転してボディーが壊れても走行可能という規格外の個性で、熱狂的なファ
ンをつかんでいる。米S&Pグローバルの大西健之アナリストは「競合車が
見当たらない」とする。


個性が強すぎるため多数の消費者に受ける商品ではなく、販売台数は毎年
4万台程度とスズキ全体の1%程度を占めるにとどまっていた。他車と大き
く異なる構造のため専用ラインでの生産となり、大量に造りにくい面もあ
る。(中略)


21年、日本以外では初めてインドに生産ラインを設けた。アフリカなどで
の需要がけん引し、23年の販売はヒット商品の目安となる10万台を超えて
12万2000台となった。」


今迄、年産4万台の製品が一気に3倍超の12万台超の販売数なので、これは
かなりのヒットです。このヒットの背景には販売台数が少なくともジムニー
を商品として継続して販売してきた事があります。


「販売台数の少ないジムニーが商品として生き永らえたのは、競争力の源
泉となる車両の全面改良を最小限にとどめる割り切りがあったからだ。


1970年の初代発売から全面改良はたった4回で、18年に発売した最新型は
20年ぶりだった。一般的に全面改良は5年ごとのため低頻度といえる。


自動車メーカー経営の王道は大量生産で、スケールメリットをてこに利益
を増やす。ジムニーはその正反対の手法で時間をかけて投資を回収し、安
価でニッチな車の販売を継続してきた。」


他にも設計段階での原価低減を進めるスズキの手法が記事では紹介されて
います。「23年11月発売の新型軽自動車『スペーシア』。スズキの軽で最
も高価な車両だが、鈴木猛介チーフエンジニアは21年に全面改良した最も
安価なアルトと兼任し同時並行で開発した。車両開発の全責任を負い、多
忙を極めるチーフエンジニアが複数車種を同時に開発するのは競合他社を
見回しても珍しい。


スペーシアと競合するのは、鈴木俊宏社長が『軽自動車の王者』と認める
ホンダの「N-BOX」など、各社が経営資源をつぎ込む豪華な主力車種だ。
単価も高いため、『スペーシアの新型車はなんでも新しい部品にしがち』
(鈴木猛介氏)という。一方で、コスト削減を徹底し、安さを武器にする
アルトを同時に開発すると、『スペーシアでも自然に必要な機能かを突き
詰めるようになる』とコスト意識が高まる効用を説明する。


新型のスペーシアでは全面改良前の旧型車と部品点数の7割を共通化して
いる。目を引くのは車両の後部ドアの内側部品を全く同じにしたことだ。
消費者の目につく大型部品に同じ部品を使い続けるのは珍しい。『何度も
自問し、変えても顧客にメリットはないと判断した』(鈴木猛介氏)とい
い、新しい金型を不要にしコスト削減効果を高めた。」
出所)著者名「ビッグBiz解剖:スズキ、安さと個性、配分の妙」『日本
経済新聞』2024年2月29日朝刊16面


チーフエンジニアに複数車種の同時開発を任せる事すら異例という中で、
最低価格帯の商品と最高価格帯の商品との両極端の車種の開発を同時に任
せるというのはその中でも特に異例と言えるでしょう。実際にそうした差
配が功を奏し、高級品の開発にありがちな、コストについて特に考慮せず
に、すべての素材・部品で最高級・最先端のものを採択するといった考え
方になりがちな所を、最高価格帯品の全面改良であっても、「その変更が
顧客にとってメリットがあるのか」を突き詰めて考えさせ、全面改良前の
旧型車と部品点数の7割を共通化するという結果につながっています。


記事では他にも新型車のエンジン開発では通常ハイブリッド用や地域別等
の複数のエンジンを用意する所を、23年12月に行ったスイフトの7年ぶり
の全面改良では、自動車の電動化を考慮し、先代車両では4種類あったも
のを新規開発の1種類に絞り、エンジンの型番にわざわざ「Z」を入れ、最
後のエンジン開発との覚悟で力を注いだ結果、熱効率は従来から1割超高
く、小型車向けとしては世界最高水準の40%に達する製品に仕上げた事例
や、開発中の電動バイクで航続距離は必要最小限とし電動自転車向けに大
量生産されいる安価な電池を採用した事例を紹介しています。


その会社肝入りの製品開発の場合、コストを度外視して、すべての素材・
部品で最高級・最先端のものを追求してしまう事があります。しかし、ス
ズキの事例は製品開発において敢えて制約を設ける事で、どうすればユー
ザの要求に応えられるか突き詰めて考えさせ、工夫をこらす様にして製品
開発を成功させる手法がある事を示しています。


2024.3.29

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