vol.161「コスト削減では価格は下がってもサプライヤの実際コストは下がりません」
vol.161「コスト削減では価格は下がってもサプライヤの実際コストは下がりません」
【今週のトピックス】
公正取引委員会は24年3月に日産自動車に対し下請法に違反する行為があ
るとして、その事実を認めた上で再発防止を求める勧告を行いました。こ
の勧告によりますと、日産は2021年1月から2023年4月までの間に「自社
の原価低減を目的に、下請代金の額から『割戻金』を差し引くことにより、
下請事業者の責めに帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減じていた。
減額した金額は、総額30億2367万6843円である(下請事業者36名)。」と
の事です。
出所)公正取引委員会「(令和6年3月7日)日産自動車株式会社に対する勧
告について」2024年3月7日 (https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2024/mar/240307_nissan.html
閲覧日:2024年3月13日)
世の中的には普及していませんが、弊社ではサプライヤとの取引価格に関
する「原価・コスト低減」と「原価・コスト削減」とを使い分けています。
弊社では原価・コスト低減は調達活動により、サプライヤの実際のコスト
を低減させる事により取引価格を低減させる行為、原価・コスト削減はサ
プライヤの実際コストの低減とは無関係に取引価格を削減する行為に対し
使っています。ですので、弊社が勧告文を書いていれば、「(サプライヤ
の実際コストの改善とは無関係に)自社の原価削減を目的に~」としてい
た所です。
コストは市場や物理的なコスト構造等の論理で決まりますが、価格は売り
手と買い手のそれぞれの意思で決まります。ですので交渉で価格は下がる
事もありますが、コストは下がりません。下請法では発注前に価格等の取
引条件を明文化し、事後的にそこに規定されていないものを下請事業者の
責めによらない理由で変更できませんので、発注後の交渉で価格を下げさ
せる行為は禁じられています。
これまではサプライヤに余裕があり、万が一、買い手企業からそうした不
当な要求があっても甘んじて受け入れる事ができたかもしれませんが、最
近ではサプライヤ間の競争が激しくなったり、様々なコストが上昇し、そ
うした不当な要求を受け入れられる余裕がなくなっています。中には、買
い手企業よりも力をつけ、そうした不当な要求は撥ねつける事ができるサ
プライヤも出てきています。
ですので、今後は下請法違反という禁じ手を使ってすら取引価格を下げる
事はできなくなっていくでしょう。ある意味、調達活動によりサプライヤ
の実際のコストを下げる事で自社のコスト低減を実践する真の調達購買の
時代になっていくものと考えます。
2024.3.15