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vol.157「不正が相次いだトヨタグループに学ぶ調達購買マネジメント」

週刊 戦略調達
  【今週のトピックス】  グループ企業で相次いだ不正を受けてトヨタの豊田章男会長が謝罪を致しました。グループで不正が相次いだ原因をまとめた記事からはその原因として・不合理な目標や計画・目標と能力との乖離・現場の声を聞かないの三点が挙げられます。 ・不合理な目標や計画記事によりますと不正 ...
当社は支出管理(スペンドマネジメント)・戦略調達(ストラテジックソーシング)・最適購買を支援するソリューション群ならびにこれら業務のマネジメントノウハウと中国・アジア・米国・欧州・中南米をカバーするグローバルソーシングネットワークとを基に1)支出管理並びに調達購買マネジメントのアウトソーシング 2)支出管理・調達購買関連システム導入 3)貴社のグローバル最適購買実現などの支出管理・調達・購買・SCMに関わるプロフェッショナルマネジメントサービスを提供しています。それらのサービスを通じて貴社の「最善の支出管理・調達・購買」を実現することにより、調達購買コスト・物流費用・経費の削減や外部支出ならびにサプライチェーンマネジメントに対する効果の最大化による貴社の競争 ...

vol.157「不正が相次いだトヨタグループに学ぶ調達購買マネジメント」

 

【今週のトピックス】

 
グループ企業で相次いだ不正を受けてトヨタの豊田章男会長が謝罪を致し
ました。グループで不正が相次いだ原因をまとめた記事からはその原因と
して
・不合理な目標や計画
・目標と能力との乖離
・現場の声を聞かない
の三点が挙げられます。


・不合理な目標や計画
記事によりますと不正が起こった各社の調査委員会の報告書では不合理な
開発日程(豊田織機)や過度にタイトで硬直的な開発日程(ダイハツ)が不正
の原因の一つとして挙げられています。


・目標と能力との乖離
目標や計画が不合理となるのはそれらが能力とかけ離れているからです。
記事では豊田織機では21年に法規認証に特化した部署を設置する迄は専門
部署が存在しておらず、専門家ではない従業員が複雑な法規則の内容を分
析することを余儀なくされていたとの事です。また、ダイハツでは担当人
員の削減、日野では開発業務と認証業務とを兼任しており、不正を起こし
た各社で目標と能力との乖離があった事が指摘されています。


・現場の声を聞かない
能力に見合わない不合理な目標や計画が是正されなかったのには不正を起
こした各社で現場の声が封殺されてしまっていた事にあります。「『量産
開始日程を遅らせるのは会社に迷惑をかける』。豊田織機の調査委員会は
従業員がさらされたプレッシャーをこう紹介した。「うまく開発が進んで
いないが、言っても聞いてもらえない中でやむなく不正に走った」ダイハ
ツでも『実際に相談しても『で?』と言われるだけ』。日野でも従業員の
間に『どうせ言ったところで何も変わらないという諦め感』が広がってい
たという。声をあげて問題を正す自浄作用は働かず、不正が起きてもモノ
を言えない空気が広がっていった。」記事では各社の現場の雰囲気につい
てこう記しています。


「不合理な目標や計画」「目標と能力との乖離」「現場の声を聞かない」
こうした特徴は下請法違反企業にも見受けられます。コスト削減の数字で
評価されやすい調達購買部門に対しては何ら根拠のない不合理なコスト削
減目標を突き付ける経営者が少なからずいます。


その不合理な目標を調達購買部員に下ろしてしまえば、調達購買部員はそ
れをそのままサプライヤに下ろしてしまうか、数字の操作といった不正を
働く事となってしまいます。買い手企業から無理な目標・計画を告げられ
たサプライヤは力のある所であればその買い手企業との取引から離反する
事となり、力のないサプライヤであればその従業員に無理を強いるか、会
社ぐるみの不正に走る事になりかねません。トヨタグループと同じ構図で
す。


こうした悪循環を断ち切るには調達購買部門長が理不尽な目標・計画を突
き付ける経営者と対峙する他にはありません。出された目標・計画を達成
するにはそれだけ追加の人員・投資が必要か、提供される人員・投資を含
めた上で現実的なストレッチを加味して達成できる数字・計画を示し、現
実を説明します。


そうした説明を経営者が受け付けない時はどうすれば良いでしょうか?不
合理な目標・計画は短期的には成果を上げるかもしれません。しかしなが
ら、そうした経営の仕方では従業員が持ちません。退職者が相次ぐか、不
正に走るかの何れかです。まともでない経営者のために非合理な目標・計
画を部下やサプライヤに押し付けたり、不正を働くといった犠牲を貴方が
払う必要はありません。正当な説明を受け付ける度量のない経営者とは袂
を分かつのが得策と考えます。


参考)「効率経営もろ刃の剣」『日本経済新聞』2024年1月31日朝刊3面


2024.2.9

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