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vol.153「ユーラシアグループ『2024年10大リスク』から2024年のサプライチェーンリスクを考える」

週刊 戦略調達
  【今週のトピックス】  米国の調査会社ユーラシア・グループが2024年の「世界の10大リスク」を発表しました。今回はそれを基に2024年のサプライチェーンリスクについて考察します。 同社が発表した2024年の世界10大リスクは:リスク No.1 米国の敵は米国リスク No.2 瀬戸際 ...
当社は支出管理(スペンドマネジメント)・戦略調達(ストラテジックソーシング)・最適購買を支援するソリューション群ならびにこれら業務のマネジメントノウハウと中国・アジア・米国・欧州・中南米をカバーするグローバルソーシングネットワークとを基に1)支出管理並びに調達購買マネジメントのアウトソーシング 2)支出管理・調達購買関連システム導入 3)貴社のグローバル最適購買実現などの支出管理・調達・購買・SCMに関わるプロフェッショナルマネジメントサービスを提供しています。それらのサービスを通じて貴社の「最善の支出管理・調達・購買」を実現することにより、調達購買コスト・物流費用・経費の削減や外部支出ならびにサプライチェーンマネジメントに対する効果の最大化による貴社の競争 ...

vol.153「ユーラシアグループ『2024年10大リスク』から2024年のサプライチェーンリスクを考える」

 

【今週のトピックス】

 
米国の調査会社ユーラシア・グループが2024年の「世界の10大リスク」を
発表しました。今回はそれを基に2024年のサプライチェーンリスクについ
て考察します。


同社が発表した2024年の世界10大リスクは:
リスク No.1 米国の敵は米国
リスク No.2 瀬戸際に立つ中東
リスク No.3 ウクライナ分割
リスク No.4 AIのガバナンス欠如
リスク No.5 ならず者国家の枢軸
リスク No.6 回復しない中国
リスク No.7 重要鉱物の争奪戦
リスク No.8 インフレによる経済的逆風
リスク No.9 エルニーニョ再来
リスク No.10 分断化が進む米国でビジネス展開する企業のリスク
です。


例年、これらのリスクがすべてサプライチェーンリスクに関わるものでは
なく半数程でありましたが、今年は間接的なものもありますが、全てサプ
ライチェーンリスクに関わっているというのが一つの特徴と言えます。


最初の「米国の敵は米国」は米国の分極化と党派対立が歴史的な高水準に
ある事を示したものです。この最大のリスクはドナルド・トランプ前大統
領が再び米国の大統領に選出される可能性が決して小さくない事です。ト
ランプ氏が再び大統領に返り咲くと、国際協調体制が再び崩れ、世界各国
の政治・経済が混乱に陥り、世界各所でサプライチェーンリスクが顕在化
する事になると筆者は考えます。


次の「瀬戸際に立つ中東」はイスラエルとハマスとの衝突がエスカレート
し、貨物保険料の高騰、中東からの原油供給の途絶、原油価格の上昇等に
つながるリスクが懸念されます。


3位の「ウクライナ分割」はロシアが部分的にウクライナの領土の支配権
を維持するというものです。これは強権国家のロシアの勝利・民主主義陣
営の敗北を意味するものであり、政治的不安定をもたらす事でサプライチェー
ンリスク高める事になります。


4位の「AIのガバナンス欠如」は生成AIを悪用し高精度な偽情報が濫造・
拡散されるというものです。これはインシデントが生じた際に混乱を増幅
させるリスクの高まりを意味します。


5位の「ならず者国家の枢軸」はロシア・北朝鮮・イランのならず者国家3カ
国が結束を強め、世界の秩序を混乱させるというものです。そうした行為
により、世界各所でサプライチェーンの混乱をもたらす事が懸念されます。


6位の「回復しない中国」は中国経済が回復しない事を示唆したものです。
これは近年懸念されていた中国の地政学的なリスクではなく、世界経済を
けん引してきた中国市場の低迷という純粋な経済的リスクを意味します。


7位の「重要鉱物の争奪戦」はバッテリーや半導体等の需要が急増してい
る品目で使用されるリチウム・コバルト・ニッケル・レアアース等の重要
鉱物の文字通り争奪戦が繰り広げられるというものです。


8位の「インフレによる経済的逆風」は世界的なインフレによる世界中での
市場低迷のリスクです。


9位の「エルニーニョ再来」は4年ぶりに強力なエルニーニョ現象が再来す
る事に警鐘を鳴らしています。エルニーニョ現象は熱波・干ばつ・暴風雨
・洪水等の異常気象の頻度と規模を増大させます。こうした異常気象は自
然災害による物流の混乱・水不足・食料難といった形でサプライチェーン
に悪影響をもたらします。


10位の「分断化が進む米国でビジネス展開する企業のリスク」は米国にお
いて支持政党だけでなく、LGBTQの権利・教育政策・環境規制・妊娠中絶
・銃規制、はたまた予防接種の義務化等、様々な論点を巡って米国内で二
極化が進み、顧客・従業員・投資家・州政府等の様々なグループが企業に
対しそれぞれの論点において立場を明確にする様に迫り、企業が自社の考
えを表明すると、どの様な立場を取っても、一方の反対派から商品や取引
のボイコットやその企業にとって不利となる法令や行政措置を科せられる
という事が頻発しており、世界最大の市場である米国でそうした事業遂行
リスクが生じている事を挙げています。


こうしてみますと「米国の敵は米国」「瀬戸際に立つ中東」「ウクライナ
分割」「AIのガバナンス欠如」「ならず者国家の枢軸」「重要鉱物の争奪
戦」の6つは地政学に起因ないしは地政学リスクを増幅させるもので、地
政学のサプライチェーンに与える影響が年々大きくなっているとしみじみ
感じます。
参考)「2024 年 10 大リスク」『Eurasia Group』


2024.1.12

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