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vol.145「日本のサプライヤの優秀さが日本企業の調達購買の弱点に」

週刊 戦略調達
  【今週のトピックス】  過去の強みが環境変化の適応を遅れさせ、弱みとなる。そんな事例をリョービの浦上社長がインタビューで紹介しています。 「私は31歳で住建機器本部の電動工具部門で課長に就任しました。赤字で国内事業の継続が難しくなり、中国・大連市にある工場へ電動工具の生産を移管。調達 ...
当社は支出管理(スペンドマネジメント)・戦略調達(ストラテジックソーシング)・最適購買を支援するソリューション群ならびにこれら業務のマネジメントノウハウと中国・アジア・米国・欧州・中南米をカバーするグローバルソーシングネットワークとを基に1)支出管理並びに調達購買マネジメントのアウトソーシング 2)支出管理・調達購買関連システム導入 3)貴社のグローバル最適購買実現などの支出管理・調達・購買・SCMに関わるプロフェッショナルマネジメントサービスを提供しています。それらのサービスを通じて貴社の「最善の支出管理・調達・購買」を実現することにより、調達購買コスト・物流費用・経費の削減や外部支出ならびにサプライチェーンマネジメントに対する効果の最大化による貴社の競争 ...

vol.145「日本のサプライヤの優秀さが日本企業の調達購買の弱点に」

 

【今週のトピックス】

 
過去の強みが環境変化の適応を遅れさせ、弱みとなる。そんな事例をリョー
ビの浦上社長がインタビューで紹介しています。


「私は31歳で住建機器本部の電動工具部門で課長に就任しました。赤字で
国内事業の継続が難しくなり、中国・大連市にある工場へ電動工具の生産
を移管。調達部品の手配や仕入れ先の開拓に奔走しました。


大連での生産準備が本格化したころです。『おい、部品が届いてないぞ!』
と現地の生産担当者に電話で怒鳴られました。血の気が引いたのを覚えて
います。慌てて部品表を確認しました。記載のあるものは全て送っていた。
でも現場には『届いていない』のです。


足りない部品の出庫元は台湾の部品会社でした。部下に台湾まで部品を取
りに行ってもらい、日本に残ったメンバーで原因究明に努めました。しか
し、いくら調べても手配ミスはなかった。それもそのはずです。表に記載
された部品のデータそのものが間違っていたからです。


日本で設計の変更時などに部品データを更新していなかったことが原因で
した。気がつかなかったのは誤った部品データで発注しても国内生産に滞
りがなかったためです。私は日本のものづくりの強さと弱さを知ることに
なります。


国内の部品会社は長年の付き合いから、誤った発注を修正して部品を製造
してくれていました。『あうんの呼吸』で通じる日本の強みですね。一方
でこれは弱さでもあると肝に銘じています。海外企業とのビジネスでは
『呼吸』は通用しませんから。」
出所)「私の課長時代:リョービ社長 浦上彰氏(上)」『日本経済新聞』
2023年9月20日 (https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20230920&ng=DGKKZO74581060Q3A920C2TB2000
閲覧日:2023年10月24日)


日本のサプライヤは優秀な所が多いです。過去においては、この様に買い
手企業のミスを無償でリカバリーしてくれる所が多々ありました。一方で、
そうしたサプライヤの対応に甘えてきた買い手企業が多くあるのではない
でしょうか?


こうしたミスは買い手企業の実行ないしは管理能力の欠落により生じます。
ミスをサプライヤがリカバリーする事により、そうした能力の欠如が明ら
かになる事はなく、そららが改善されず置き去りになってしまいます。ト
ヨタがJITで在庫を極限まで減らし適正在庫のみに留めようとするのは、
過剰在庫がこうした能力の欠如を隠してしまうからというのが一因です。
問題は顕在化しない限り、改善される事は決してありません。


既存サプライヤに余力があったり、国内サプライヤとだけつきあっていれ
ば良かった時代はそれでも良かったかもしれません。しかしながら、各サ
プライヤが激しいグローバル競争に晒され、買い手企業が日本以外のサプ
ライヤと付き合っていかなければいけない現在においては、無償で買い手
企業のミスや能力の欠如をリカバリーしてもらえると考えるのには無理が
あります。


国内のサプライヤにはそうした体力が残っておらず、海外のサプライヤに
してみれば、契約にない事を無償で提供するというのは全く理解ができな
い事であり得ません。


そうすると、買い手企業は自社でそうしたミスや能力の欠如をカバーして
いかなければならないのですが、そうした問題点すら把握していないのが
現状です。今後、5年位掛けて、各企業はこうした問題点に気付くのでは
ないでしょうか。


残念ながら過去の日系サプライヤの非常に高い忖度の能力が今の日本企業
の低いサプライチェーン管理能力につながっている、筆者にはそんな気が
してなりません。


2023.10.27

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