vol.142「中小企業庁/2023年3月の価格交渉促進月間のフォローアップ調査の結果発表」
vol.142「中小企業庁/2023年3月の価格交渉促進月間のフォローアップ調査の結果発表」
【今週のトピックス】
中小企業庁は2023年3月の価格交渉促進月間のフォローアップ調査の結果
について発表しました。調査結果によりますと、直近6ヶ月間における貴
社と発注側企業との価格交渉の協議についてで「価格交渉を申し入れて応
じて貰えた/発注側からの声かけで交渉できた」割合は前回調査(22年9月)
の58.4%から63.4%に増加が見られます。行政のPRのせいでしょうか?サプ
ライヤ・買い手企業のそれぞれにおいて、適正な価格で取引すべく、価格
交渉をする・価格交渉に応じるという事が少し浸透してきたのでしょうか。
今回の調査では価格交渉・転嫁の好事例が幾つか紹介されています。挙げ
られているものとしては、
■適正な価格転嫁が行われる様に会社を挙げて対応する方針を経営トップ
が社内・取引先に発信
■コスト上昇分を取引価格に反映させる必要がないか発注者側から能動的
に確認し価格交渉を働きかけ
■市況を正しく反映させるために原材料・電力・労務費・運送費等の費目
を明示した価格交渉用のフォーマットをコスト構造分析力のある買い手企
業側から提示し、サプライヤに呼びかけ
■原油価格上昇分を考慮した燃料サーチャージの導入
■労務費の値上げに対応する予算を措置し適正な転嫁を行う環境を整備
■サプライヤとの交渉を記録し、上長が必ず確認することをルール化。そ
のデータを社内で一元管理し、交渉の進捗状況や結果を視える化
といったものがあります。買い手企業側からコスト上昇分の価格転嫁を促
す等、かなり能動的なものが目立ちます。最後のサプライヤとの交渉の記
録・上長確認・交渉の進捗状況や結果の視える化は、組織的に適正な価格
での取引を進めて行こうという姿勢が伺えます。
積極的に値上げを受け入れてしまうと損ではないかと思われる方もいるか
もしれませんが、現在はコスト上昇基調なので値上げの受入となりますが、
市況下落局面では、今回スムーズに価格転嫁を進めた事を材料に、迅速に
値下げ交渉を進める事ができますので、一概に損をするばかりとは言えま
せん。市況に合わせて機動的に適正価格で取引できるので、買い手企業の
顧客に対して市況の肌感覚に合った価格での商品・サービスの提供が可能
になるメリットは大きいと考えます。
こうした適正価格での取引の志向は買い手企業もサプライヤから選別され
る時代になってきていることを示唆していると考えます。特に、優良サプ
ライヤであればある程、買い手企業を選べる立場にあるので、こうしたサ
プライヤの囲い込みには公正な取引相手であるとそれらのサプライヤに認
めてもらう必要があります。
筆者には政府は公正な取引が行われる様に監視を強めていると感じられま
す。今月からはインボイス制度が始まりました。向こう3年間は経過措置
があるため免税事業者に対する支払の8%は仕入税額控除が受けられ、買
い手企業側で仕入税額控除が受けられないのは2%分のみとなりますが、こ
うした仕入税額控除が受けられなくなる事を理由として、その免税事業者
と交渉する事なく請求金額からその金額を一方的に減額、免税事業者が課
税事業者に転換したにも関わらず課税転換の価格交渉に応じず一方的に単
価を据え置くといった行為は独占禁止法上問題になる可能性があります。
インボイス制度は政府肝入りの政策ですので、こうした行為には目を光ら
せている所だと考えます。
2023.10.6