vol.135「自動車メーカのステランティスの半導体調達戦略から学ぶ調達難カテゴリーにおける調達戦略・手法」
vol.135「自動車メーカのステランティスの半導体調達戦略から学ぶ調達難カテゴリーにおける調達戦略・手法」
【今週のトピックス】
改善されつつはありますが、半導体の調達難により自動車業界では新車の
納期が車種によっては1年超と長期化しています。また、電気自動車の普
及によりレアアースやレアメタルの調達難も予想されます。自動車関連以
外でも穀物・魚介類等の食料品でも調達難が想定されます。
今回は自動車メーカのステランティスが発表した半導体カテゴリーの調達
戦略を参考に調達難カテゴリーに対する調達戦略のあり方を解説します。
ステランティスが掲げた半導体カテゴリーの調達戦略は以下となります。
■調達品の視える化
■低調達リスク品への集約
- 体系的リスク評価と高リスク品の排除
- グリーンリストの導入・徹底
■長期コミットメント
- 半導体製品レベルでの長期需要予測によるチップメーカ・シリコンファ
ウンドリの供給キャパシティ確保
- 長期契約を含めたミッションクリティカル品の半導体メーカからの直接
購入
- 戦略半導体サプライヤとの連携による製品改良・独自製品開発
■調達品の視える化
同社は半導体データベースを導入し調達している半導体製品の内容につい
完全な透明性を確保するとしています。これは次の体系的リスク評価・グ
リーンリストにもつながるものです。また、ある品目で調達難となった時
にその機能・仕様等の内容が明らかになっている事で迅速に代替品の調達
に着手する事が可能となります。
■低調達リスク品への集約
同社は体系的に各調達品目のリスク評価を行い、高リスク品を使用しない
様に排除していくと共に、同社が供給枠を確保しやすい調達リスクの低い
ものを一覧化したグリーンリストを導入・徹底するものとしています。こ
れらは設計ガイドの役割を果たし、設計段階で高リスク品を排除・低リス
ク品に集約していく事となるでしょう。調達品を集約していく事で、サプ
ライヤに対する影響力を強化する狙いもあるでしょう。
■長期コミットメント
同社は半導体製品レベルでの長期需要予測に基づき長期的にチップメーカ
やシリコンファウンドリの供給キャパシティ確保していくとしています。
需要予測の共有だけではサプライヤが自社のために動いてくれない場合も
ありますので、ミッションクリティカル品を中心に長期契約を行い、予め
供給枠を確保するという手法も取り入れています。ミッションクリティカ
ル品については商社経由ではなく、メーカからの直接購買とする事でより
密な関係の構築・調整が可能となる様に図っています。
また、戦略半導体サプライヤとの連携による製品改良・独自製品開発も買
い手企業の長期コミットメントを示すもので、必要に応じて改良・開発製
品の買取数量を示し、予め供給枠を確保しているものと想定されます。
同社の発表によりますと半導体メーカとの直接調達契約は現時点で2030年
迄に総額で1超6千億円に近くなっているとの事です。
同社の発表には含まれていませんでしたが、長期コミットメントにより供
給枠を確保する手法についてはサプライヤの買収や内製化があります。こ
れらは調達ではコントロールが難しい高調達リスク品について自社プロセ
スに統合する事で自社のコントロール下に置くものです。
こうした戦略・手法は何れも半導体以外のカテゴリーにも有効です。貴方
も自社の調達品の中長期的な調達リスクを評価し、中長期的な調達難が予
想されるカテゴリーについてはこうした戦略・手法を展開してはいかがで
しょう?
参考)Stellantis N.V."Stellantis Implements Multifaceted Semicon-
ductor Strategy to Ensure Supply Security, Drive Innovation" press
releas, July 18, 2023 https://www.stellantis.com/en/news/press-releases/2023/july/stellantis-implements-multifaceted-semiconductor-strategy-to-ensure-supply-security-drive-innovation 閲覧日:2023年8月17日)
2023.8.18