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vol.124「言わずもがなですが、ご担当材の技術革新の動向を抑えましょう」

週刊 戦略調達
  【今週のトピックス】   バッテリーの技術で主役交代が起こりそうです。現在の主流はリチウム(Li)イオン2次電池(LIB)ですが、ナトリウム(Na)イオン電池(NIB)が主役になりそうです。 この事例を紹介した記事によりますと「わずか2年前、NIBの開発、量産に取り組んでいるのは世 ...
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vol.124「言わずもがなですが、ご担当材の技術革新の動向を抑えましょう」

 

【今週のトピックス】

 

バッテリーの技術で主役交代が起こりそうです。現在の主流はリチウム(Li)
イオン2次電池(LIB)ですが、ナトリウム(Na)イオン電池(NIB)が主役
になりそうです。


この事例を紹介した記事によりますと「わずか2年前、NIBの開発、量産に
取り組んでいるのは世界で数社だった。ところが、現時点ではCATLだけで
はなく、電池セルメーカーだけで現時点で少なくとも20社超。原材料や部
材メーカーも含めると約50社にのぼる。今後はさらに増える見込みだ。」


NIBが注目される様になったのは高いエネルギー密度のLIBに使われている
コバルト(Co)、次いでニッケル(Ni)の供給が児童労働問題やロシアの
ウクライナ侵攻等で今後の安定供給に不安が広がり、それらを使わないリ
ン酸鉄リチウム(LFP)系LIB(以下、LFP)が急速にEV向バッテリー市場
を席巻。これをきっかけに、航続距離の長さだけがEV向市場での訴求ポイ
ントではない事が判明し、更にその後でリチウム(Li)も供給タイトになり、
LIBの重要な原料の1つである炭酸リチウム(Li2CO3)の市場価格が暴騰、
結果、将来にわたって供給に不安がないNaが脚光を浴びたとの事です。


NIBが次世代のバッテリーの主役として有力視されるのはエネルギー密度
ではLFPと同等ですが、量産が進めばLFPよりもかなり価格低減が進む。安
全性や信頼性がLFPより高く、超急速充電やセ氏マイナス30度といった低
温での出力特性に優れるといった点が挙げられています。


NIBの製造コストがLIBに比べて大幅に下がるとみられるのには、Liイオン
がNaイオンに代わるだけでなく、正極材料も安い材料が多いこと、負極は
特定地域に依存する黒鉛に代わりハードカーボンが使えること、負極集電
体はLIBでは高価なCu箔を選ばざるを得ないが、NIBでは銅(Cu)箔の1/3の
価格のアルミニウム(Al)箔が使えるといった事があるからです。


中国・民生証券の試算では、NIBは市場の立ち上がり時こそLFP等よりも製
造コスト若干上回っていますが、量産が進みサプライチェーンが整い部材
や材料の調達コストが下がってくると、2022年11月時点の14,595円/kWhか
ら6,500円/kWhにまで低減し、LFPの主なコストドライバーの炭酸リチウム
(Li2CO3)の価格が22年11月時点のものから6割程度に落ち着いたとしても
NIBの製造コストはLFPの6割以下となるとしています。
出所)野澤 哲生「ナトリウムイオン電池時代幕開け、関連メーカーが50
社超で価格はLIBの1/2へ」『日経クロステック/日経エレクトロニクス』
2023年5月8日 (https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/07985/
閲覧日:2023年5月22日)


どうやら、NIBはコスト低減のみならず、調達難のリスクも低下させる技
術革新となりそうです。技術革新の無いサプライ市場は非常に限られてい
ます。ご自身のご担当材の市場における技術革新の動向を抑えておくのは
ご担当材の調達戦略を考える上で不可欠な要素です。


2023.5.26

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