vol.107「ITベンダの選定には製品評価だけではなく被買収リスクのチェックも」
vol.107「ITベンダの選定には製品評価だけではなく被買収リスクのチェックも」
【今週のトピックス】
調達・購買管理ソリューションをSaaSで提供する米クーパ・ソフトウエア
がプライベートエクイティファンドのトーマ・ブラボーに買収される事に
合意しました。
出所)「ソフトウエアのクーパ、PE投資のトーマ・ブラボーに身売りで合
意」『ロイター』2022年12月13日 (https://jp.reuters.com/article/coupa-m-a-thoma-bravo-idJPKBN2SW1XX
閲覧日:2023年1月18日)
調達・購買領域に限らずソフトウェア業界はM&Aによる業界再編が活発な
材市場です。こうした企業買収は買収されるソフトウェア企業のユーザ企
業にとっては一般的にはデメリットしかないため注意が必要です。
ソフトウェア企業の買収は同業他社やファンド等の機関投資家の何れによ
るものであっても一般的には短期的な利益改善に重点を置いているため被
買収企業の経営に以下の様な歪みが生じます。
■短期的利益改善のため、ソリューション開発やデイリーの顧客サポート
等への長期的な投資に悪影響を与える可能性があります
■利益基準を満たさないソリューション・事業の縮小・停止
■被買収企業のマネジメントを中心とする人材の退職。彼/彼女らによる
これまでのコミットメントが反故になります。そうしたコミットメントで
契約書に記載されているものであっても書面通りのみで捉えられ、行間に
対して行われていた配慮が失われてしまいます
■被買収企業のソリュショーンで買収企業と重複するモジュールについて
はそれら製品の優劣ではなく、例え機能的には劣っていたとしてもバージョ
ンアップと称して買収企業のものに置き換わっていきます
■特に今回の様に機関投資家に買収された場合には、その利益確定のため
に多くの場合、上場を待たずに再売却されます。その時には再び上記の負
のスパイラルが繰り返される事となります
ですので貴社でITソリューションの選定を実施する際には製品の評価のみ
ならず、そのソリューションベンダの財務の独立性・健全性をチェックす
るのをお勧めします。
2023.1.20