vol.67「物価スライド条項が一般的になる?」
vol.67「物価スライド条項が一般的になる?」
【今週のトピックス】
「建物物の鉄筋に使う異形棒鋼の取引価格が、13年4カ月ぶりに1トン10
万円を超える高値水準まで急上昇した。指標品は前月比8%高い。(中略)
異形棒鋼は電炉の鉄鋼メーカーが主に製造している。値上がりの主因は原
料に使う鉄スクラップの高騰だ。鉄筋くずなどからなる標準品種『H2』
の電炉の鉄鋼メーカーの買値は、東京地区で現在1トン5万7000円前後。1月
下旬に付けた直近の安値と比べ9%高い。08年8月以来の高値圏にある。中
国の景気刺激策の強化による鋼材消費の拡大観測などを背景に急速に値上
がりした。
原油や液化天然ガス(LNG)の高騰で電力価格が上昇し、電炉のエネルギー
コストも大きく膨らむ。製鋼の際に脱酸素剤として使うフェロシリコンな
どの合金鉄も昨夏から高止まりしている。(中略)
コスト高が重くなってきた棒鋼メーカー側は製造コストの変動を迅速に価
格に反映できるよう、商習慣の見直しも求める構えだ。棒鋼は使用する建
物の工事期間が始まる前にメーカーとゼネコンが商社を経由して必要量を
まとめて契約するのが一般的だ。契約から実際の納入完了までに1年以上
の時間が空くことも少なくない。(中略)
このためメーカーや商社はゼネコンに棒鋼の短納期化や契約期間の短縮を
要請している。棒鋼メーカーの幹部は『契約から納入完了までを四半期も
しくは半期に短縮することが理想』と話す。(中略)
ゼネコンにとっては施主と決める建設予算の組み方に変更が生じるため、
『商習慣の見直しは一筋縄ではいかない』(鉄鋼商社)。」
出所)「鉄筋用棒鋼、13年ぶり高値」『日本経済新聞』2022年3月4日朝
刊 21面
値決めの時期が納品時期と大きく乖離する建築資材等のケースです。この
事例の様に、建築資材では値決めから実際の製造・納品が数年先となる事
が少なくありません。この場合、サプライヤはその原材料等の市況の変化
による製造コスト増のリスクを抱える事となります。当然、サプライヤも
そのリスクを見越して見積にある程度のリスクプレミアムを載せています
が、競合との競争がある中で、見積に含められるのは限定的とならざるを
得ません。輸入品や原材料等に輸入品を使用している品目では、為替の影
響もあり10%超のコスト高となる事も珍しくありません。
デフレ基調にある日本国内での取引であれば、買い手企業のエンド顧客と
の契約が同様の条件となっているため、こうした値決めと製造・納品時期
のずれを受け入れる様にサプライヤと交渉する事もできるかもしれません
が、輸入品や採算が厳しくなる中で原材料等に輸入品を使用している品目
ではサプライヤはこのリスクを受け入れないでしょう。
こうした品目の取引では今回のケースの様に短納期化や単価の適用期間の
短縮等により値決めと製造・納品時期をできる限り近づける必要がありま
す。どうしてもこれらが難しい場合には、市況変動を反映する物価スライ
ド条項を設ける手もあります。
こうした手法はサプライヤのリスクを除く事になりますので、現在の価格
に織り込まれているリスクプレミアムを取り除く事が可能になります。ま
た、製造・納品時期に市況が下がっている時の高値掴みリスクを減らすと
いったメリットもあり、より適正な価格での取引が可能となります。
一方で、こうした条件を貴社のお客様との契約にも反映しないと貴社がこ
の価格変動リスクをすべて負う事になりますので、営業部門も含めて、貴
社のお客様との価格決定方法を変えるか、貴社でそのリスクを負うかの検
討も必要となります。
2022.3.25