vol.136「秋本議員、司直が許しても、あなたは調達購買担当者としてはダメダメです!」
vol.136「秋本議員、司直が許しても、あなたは調達購買担当者としてはダメダメです!」
【今週のトピックス】
元自民党の(嫌疑を受け離党)秋本真利衆院議員に対し洋上風力発電を巡り
日本風力開発から計約3,000万円の賄賂を受けとったとの嫌疑が掛けられ
ています。
私がこの案件に注目したのは22年10月に洋上風力発電の公募における選定
ルールを改訂した事にあります。事の経緯は21年12月末に遡り、その時に
三菱商事が政府が3つの海域で公募していた洋上風力発電事業ですべて落
札した事にあります。これに対し、急に一社独占に対する批判の声が巻き
上がり、上記の選定ルールの変更となりました。主な変更点のポイントは
落札キャパシティの制限や事業実現性評価の合計点についての点数補正制
度の導入等です。
まず、落札キャパシティの制限は尤もらしく聞こえますが、本来は優良サ
プライヤにキャパシティがあるのであれば、それに制限を掛けるのはおか
しな事です。カテゴリー戦略としてのシェア割の様にも見えますが、何だ
か官製談合の様で当時において違和感を覚えたものです。
そして、事業実現性評価における点数補正ですが、こちらはこれまでは各
評価項目における点数の合計点をそのまま評価点としていたものを、促進
区域毎に最高の評価点を受けた公募参加者の評価点が満点となるように補
正するものです。元々、価格については同じ様に評価していますが、最高
の評価点に下駄をはかせる補正になりますので、選定区域の事業実現性評
価で最高の評価点を受けた入札者に対してのみ有利に働く補正となります。
筆者は元来、恣意性が働く総合評価方式には反対で、QDM要件は足切り条
件としこれらをクリアした入札・見積の中から最も価格競争力のある会社
を選ぶ、それが難しい場合にはQDMに関する提案をキャッシュフローに置
き換え、金利を考慮したNPV(準現在価値)に換算してそれのみで評価する
という立場のため、これらの変更はロジカルではなく恣意的なものだと感
じていましたが、衆人が見ている公募案件の中で収賄が行われていると迄
は考えが及びませんでした。秋本氏の本件の収賄嫌疑については司直の判
断に委ねますが、今回のケースから我々が学ぶポイントは以下となります。
■事後的な選定ルール・方法の変更はその恣意的な意図が各サプライヤに
伝わり、次回以降、不利な扱いを受けたサプライヤすべてが非協力的とな
り、見積不調となります。
■サプライヤ選定ではなるべく個人の恣意性を排除し、できる限りQDM要
件は足切り条件としこれらをクリアした入札・見積の中から最も価格競争
力のある会社を選ぶべきです。QDMを金額換算しようとしても複雑になる
だけで、どこかで換算式に個人的見解が入ってしまい、適正さに欠けるも
のです。評価に恣意性が入ってしまうと、そこがサプライヤとの癒着・不
正の温床となってしまいますので、可能な限り恣意性を排除すべきです。
■あなたが調達管理者の立場である場合、担当者があるサプライヤ選定に
おいて複雑ないしは恣意性のあるサプライヤ選定方法を用いてきた時には、
特定サプライヤとの癒着・不正がないか疑うべきです。その懸念がある場
合には、そうした事実がないか確かめると共に、もっとシンプルで公正な
サプライヤ選定方法に基づきサプライヤ選定を行う様に担当者を促すべき
です。
2023.8.25