vol.134「サプライヤ選定時の仕様・要件の想定が実際と異なってしまうアクシデントへの対処方法」
vol.134「サプライヤ選定時の仕様・要件の想定が実際と異なってしまうアクシデントへの対処方法」
【今週のトピックス】
サプライヤ選定時の仕様・要件の想定は正しく行わなければなりません。
なぜならば、これらが調達品を既定し、サプライヤの見積前提となり、契
約単価が決まります。想定していた仕様・要件が実際と異なった場合、単
価の見直しに留まらず、全く異なる技術を用いた調達品やサプライヤの再
選定が必要となる事態になりかねない事もあります。
「新東名高速道路の唯一の未開通区間である新御殿場インターチェンジ(IC)─
新秦野IC間(延長約25km)では、地質や地盤を巡るトラブルがたびたび発生
している。事業を進める中日本高速道路会社は、当初20年度としていた開
通予定を23年度に延期。さらにトラブルが続いたことから開通予定をいっ
たん白紙に戻し、その後、27年度とした。
最初の開通延期の主な要因となったのが、神奈川県松田町に建設している
エクストラドーズド橋の中津川橋だ。着工後の調査で、主塔の下に脆弱な
断層破砕帯が広がっていると判明。それを避けるために、川の左岸側に計
画していた主塔を右岸側に変更する必要が生じた。構造形式の大幅な見直
しなどで、事業費が300億円増大した。
2回目に延期した要因の1つは、中津川橋に隣接する高松トンネルだ。NATM
工法で掘削中に脆弱な地盤が出現し、トンネル内に土砂が流入した。この
事故を受け、長尺鋼管フォアパイリングやインバートストラットといった
対策を追加。事業費が245億円増えた。
現在も、地表面の変位が管理値を超えたため掘削を止めている。いつ完成
するのか、全く見通しが立たない状態だ。」
出所)青野 昌行・橋本 剛志「後出し増額の罪:事業費膨張の要因を解剖、
『仕方ない増額』の舞台裏」『日経クロステック/日経コンストラクション』
2023年3月17日 (https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/ncr/18/00183/031000003/
閲覧日:2023年7月31日)
残念ながらこの様な事態に陥った場合にすべき対応は以下の二点となりま
す。
一つは、これまでの投資をサンクコストとした上で、手直しやサプライヤ
代替等のそれぞれの対応の選択肢の費用・効果を算出し費用対効果が最大
となる選択肢を選ぶ事です。これまでの投資をサンクコストとするのは、
これまでの投資は各選択肢の費用・効果に影響を与えませんので、正しい
意思決定をするにはこれまでの投資は除外して考える必要があります。
一方で、サプライヤを代替する場合にはこれまでになされた業務分の撤去
や解約違約金等のペナルティが生じる事もあり、既存のサプライヤに対し
て発注内容を修正するよりもコストが高額となりがちです。しかしながら、
修正仕様・要件によっては既存サプライヤでは対応できずこちらを選択せ
ざるを得ないケースもあります。
もう一つ実施すべきは仕様・要件を修正せざるを得なかった原因の追究と、
そうした不備が再発しない様に開発・設計・サプライヤ選定プロセスの中
で改善すべき点がないかの確認とそうした点があれば改善の実施となりま
す。
2023.8.4