vol.130「コスト高騰に抗う!食品・飲料メーカ各社のコスト低減の取組」
vol.130「コスト高騰に抗う!食品・飲料メーカ各社のコスト低減の取組」
【今週のトピックス】
「国内食品メーカーが商品数を絞っている。2022年の品目数は5年前に比
べて3割減った。(中略)この5年で減り幅が大きかったのは、原料高の影
響が大きい調味料や食用油脂などを使った商品が多い。しょうゆ(71%減)
や食用酢・酢関連調味料(69%減)、マーガリン・ファットスプレッド(67%減)、
マヨネーズ(40%減)などだ。」
記事には以下の各社の取組が紹介されています。
■キリンビバレッジは22年に「アルカリイオンの水」2リットルの販売を
終了するなど商品を見直し、「午後の紅茶」「生茶」「『プラズマ乳酸菌
入り』飲料」へと選択と集中を進める
■ワイン大手メルシャンは22年の新製品数を前年比の5割減
■食品世界最大手のネスレ(スイス)はSKU数を1年半前に比べ約2割減。23年
もさらに商品数を1割削減する計画
■ハウス食品は23年春の新商品を前年の51品目から30品目に減らす
■プリマハムは春夏向け新商品を前年比48%減の14品目に絞る
出所)「食品 5年で品目3割減 定番に集中、戦略転換」『日本経済新聞』
2023年5月25日 (https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20230525&ng=DGKKZO71301740U3A520C2EA2000
閲覧日:2023年7月3日)
現在は原材料・物流・電力等の様々なコストが上昇する中で、調達購買部
門だけのコスト低減の取組では焼け石に水といった状況です。
食品・飲料業界ではそうした状況を受けて製品戦略にまで遡った抜本的な
コスト低減の取組を進めています。食品・飲料業界では新商品で目先を変
えて売り上げを伸ばすといった戦略がこれまでは多く取られていましたが、
現在のコスト上昇を受け、採算の悪い製品を廃番としたり、新商品数を減
らしたりする一方で、主力の定番商品に重点的に広告宣伝・販促を行うと
いう戦略に転換しています。
新商品は消費者への商品の浸透・訴求に広告宣伝費が余計にかかり、販売
予測も難しく不良在庫を生じさせやすいリスクがあります。
在庫に関して言えば、製品数が増えると製品在庫のみならず派生的にそれ
らに投入される原材料・資材の種類・在庫数も膨らみ、在庫効率が低下し
勝ちです。
ですので、製品数ならびに新商品投入数の絞り込みは様々なコストが上昇
する中でも抜本的なコスト低減を引き出し、すべてのコスト上昇分が吸収
できなかったとしても、その上昇をかなり抑える事ができます。
2023年はペースが落ちてきたとはいえ、まだまだ原材料・部材の値上要請
も多く、値上要請がない品目であっても価格が高止まりしたままというも
のが殆どで、調達購買部門にとっては受難の年と言えます。
こうした状況だからこそ、調達購買部門のみでのコスト低減には限界があ
り、製品数の絞り込みやVA・VE等による全社での抜本的なコスト低減の取
組が必要である事を経営層・全社に対し訴える良い機会ではないでしょう
か?
2023.7.7