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vol.128「名刺に通常の6倍の価格を払う価値はある?」

週刊 戦略調達
  【今週のトピックス】   調達購買の業務はとにかくコストを下げる事でしょうか?そうではないと弊社では考えています。調達品の価格に関する調達購買部門の役割について弊社では「適正なモノを適正な価格で購入できる様にする」事と考えます。今回はそれに関するケースをご紹介します。 「環境や人権 ...
当社は支出管理(スペンドマネジメント)・戦略調達(ストラテジックソーシング)・最適購買を支援するソリューション群ならびにこれら業務のマネジメントノウハウと中国・アジア・米国・欧州・中南米をカバーするグローバルソーシングネットワークとを基に1)支出管理並びに調達購買マネジメントのアウトソーシング 2)支出管理・調達購買関連システム導入 3)貴社のグローバル最適購買実現などの支出管理・調達・購買・SCMに関わるプロフェッショナルマネジメントサービスを提供しています。それらのサービスを通じて貴社の「最善の支出管理・調達・購買」を実現することにより、調達購買コスト・物流費用・経費の削減や外部支出ならびにサプライチェーンマネジメントに対する効果の最大化による貴社の競争 ...

vol.128「名刺に通常の6倍の価格を払う価値はある?」

 

【今週のトピックス】

 

調達購買の業務はとにかくコストを下げる事でしょうか?そうではないと
弊社では考えています。調達品の価格に関する調達購買部門の役割につい
て弊社では「適正なモノを適正な価格で購入できる様にする」事と考えま
す。今回はそれに関するケースをご紹介します。


「環境や人権に配慮したエシカル(倫理的)な素材を使った高価格の名刺
が増えている。中には1枚で約30円する物もある。対面が制限された新型
コロナウイルス禍を経て、会うことの重要性が再認識された。物語性のあ
る名刺を関係づくりに役立てたいとの思いが、1枚に込められている。


三井不動産グループでオフィスや商業施設の空間設計を手がける三井デザ
インテック(東京・中央)は、名刺の紙を2022年春に切り替えた。東日本
大震災の被災農家が育てた綿花の茎を使っており、温かな色味と風合いが
特徴だ。


津波で稲作が困難になった農地では塩害に強い綿花の栽培が広がる。総務
人事部の桐山徹治氏は『当社も東北の子どもたちを対象とした絵画コンクー
ルを共催してきた。復興への願いを名刺で伝えたかった』と語る。


価格は両面カラーで100枚1500円程度。従来より5割程度高いが、商談など
で風合いや手触りに関心を示した取引先が素材の由来を聞くなど、おおむ
ね好評だ。(中略)


名刺や封筒を製造・販売する山桜は名刺の素材に「エシカルな紙の扱いを
増やしてきた。『最近ではSDGs(持続可能な開発目標)に配慮した紙を名
刺に使いたい企業が急速に増えている』(マーケティング部門の村上大介
部長)。エシカルな素材を使った名刺は22年度の同社の総販売数量の6割
を占めた。


12年に採用した『バナナペーパー』は、ザンビアで盛んな有機バナナ栽培
で廃棄される茎の繊維から作る。環境負荷を減らすだけでなく、繊維を取
り出す工程で雇用を生むなど、現地の貧困対策にもつながる。


バナナペーパーは用紙代だけで100枚当たり約1200円かかる。同社の通常
の用紙の4倍以上だ。これに1500円前後の印刷代が加わる。実際の名刺の
価格は3000円程度になる。1枚当たり30円程度だ。」
出所)後藤宏光「価格は語る:エシカル名刺、1枚30円も」
『日本経済新聞』2023年6月8日朝刊17面


通常の用紙の両面カラー名刺100枚の価格は送料別で500円程度からとなり
ます。ですのでバナナペーパーの名刺のコストは6倍です。それではバナ
ナペーパーの名刺を採用した企業の判断は誤りだったのでしょうか?それ
らの企業が名刺に商談を活性化させる物語性や自社のESGの取組姿勢を持
たせるという機能を求め、その機能の対価として通常の用紙の名刺との価
格差を適正と判断しているのであれば適正な選定と言えます。


弊社では企業におけるすべての外部支出はコストではなく投資と考えます。
企業の支出は本来はすべてにおいて事業で利益であげるために使われるも
のであります。それは製品・サービス提供のための原材料・部材や設備投
資のみならず、マーケティング・IT関連やその他のコーポレートサービス
或いは経営施策絡みの一時的な支出であっても、事業で利益を上げるため
に行われるものです。企業の支出は何れも何等かのリターン・成果を上げ
るために行われるものであり、それが外部支出はコストではなく投資と申
し上げる理由です。


投資の場合、支出の最小化ではなく、費用対効果の最大化が求められます。
確かに、投資であっても効果が一定であるならば支出を最小化する事で費
用対効果の最大化が可能ですが、投資であるならば多少支出が大きくなっ
ても費用対効果がより大きくなる様なリターンが得られるのであれば、そ
ちらを選択すべきです。


今回のケースは正にそうしたもので、名刺に販促ないしはPR効果を求めて
います。弊社としてはそうした経営施策への投資そのものについては反対
はしません。どのような投資をするかというのは各社の経営判断です。た
だ、こうした投資の多くにおいて、本来であればあるべきである、それら
の効果を測定するKPIを定め、導入後に効果測定をした上で継続・改善・
打ち切りの判断をするというプロセスが抜け勝ちである事が懸念されます。
この振り返りのプロセスが抜けてしまうと期待リターンを下回る誤った投
資を繰り返すといった結果に陥りがちです。


2023.6.23

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