vol.65「QDMはどう評価する?」
vol.65「QDMはどう評価する?」
【今週のトピックス】
秋田県や千葉県の3海域で政府が公募した洋上風力発電で三菱商事を中心
とする企業連合が総取りする結果となった事が問題となっています。
問題となっているのはその選定方法です。落札した企業連合の事業計画で
示された発電単価は1キロワット時あたり11.99円、13.26円、16.49円
と10円以下の欧州ほどではないものの、次点の企業連合とは5円前後の大
差となりました。
問題視されているのはその運転開始時期の評価方法です。落札企業連合は
2028~30年の運転開始を掲げていますが、選定にあたった経産省による
と数年早い計画を提案した所もあったといいます。自民党の政治家達がこ
の運転開始時期の違いが正しく評価に反映されていないと注文を付けてい
ます。
参考)新井惇太郎「洋上風力、安さか早さか(底流)」『日本経済新聞』
2022年2月22日朝刊 5面
このケースはサプライヤの選定方式の一つである総合評価落札方式の課題
を示す端的なケースです。この方式は価格(C)のみで選定するのではなく、
価格と価格以外のQDMの要素とを総合的に勘案して落札者を決定するもの
です。通常は価格も含めたQCDMのそれぞれの評価項目につき、重みと採
点方法を決め、重みx項目毎の点数の合計で落札者を決定します。
今回のケースでは3海域いずれも240点満点で、120点が電気の供給価格、
80点が事業の実施能力、40点が地域経済への波及効果、運転開始時期は
事業能力80点の内の20点の一部でした。価格は最も安ければ120点獲得で
きますが、運転開始はどれだけ早めても20点までしかとれない形となって
います。項目毎の配点の違いに採点に加えて重みが反映されています。
この重みと採点方法に調達者の調達戦略が反映されており、落札結果を見
て重みや採点方法を調整し選定結果を覆す様な事があれば、公正な選定を
保つ事ができません。この様に総合評価方式の問題は1.なぜその重みや採
点方法となるのか説明しきれない 2.担当者の恣意が働く余地があるとい
った課題があります。そのため、弊社ではできる限り、総合評価方式の使
用は避ける様にしています。
総合評価方式の課題の解消には、
1.QDMの要件についてはできる限り足切り基準とする
2.足切り基準とする事ができない場合には、可能な限りその項目のキャッ
シュフローへのインパクトを考え、それをNPVに換算して価格と合算し評
価
といった手法が有効です。
例えば、2028~30年の運転開始時期が遅いというのであれば、運転開始
時期は2025年迄とする等の足切り基準を設けるべきでした。早ければ早
い方が良いというのであれば、早期運転開始による技術波及効果のNPVを
算出し、その金額を消費者への負担減と合わせて評価すべきです。
足切り基準とする事ができない、もしくはキャッシュフローへの影響を与
えない要件は、重要ではなく、それを要件と掲げている方の単なる好みの
ものでしかないと言わざるを得ないと弊社では考えます。
2022.3.11