vol.57「パッケージの小型化の価値向上」
vol.57「パッケージの小型化の価値向上」
【今週のトピックス】
「家電製品のパッケージが小型化している。任天堂は10月に発売した「ニ
ンテンドースイッチ」の新型機の外箱の容量を2割削減。ソニーグループ
はワイヤレスイヤホンの包装の大きさを3分の1にした。(中略)
家電製品はこれまで高級感を演出するため大きなパッケージを採用する傾
向があった。(中略)海外では米アップルが20年に発売した『iPhone12』
から外箱の容量を従来の半分程度にしている。消費者の価値観も変化し、
小さいパッケージは無駄がないと好意的に見られるようになってきた。」
出所)「新型スイッチ、外箱小さく」『日本経済新聞』、2021年11月11日19面
貨物輸送の運賃は、ばら積みの場合、一般的に実重量と容積を重量に換算
した容積重量とを比較し、より重い方によって規定されるケースが多々あ
ります。ですので、パッケージの小型化は容積重量が勝る軽量品において
は従来からある物流費低減の手法です。また、小さいパッケージの方が包
装の材料の使用量や在庫の保管スペースが少なくなり、包装材料費や保管
費を抑制する事ができます。
しかしながら、過去においてはアップルの様に製品の高級感を出すために
敢えて大きめのパッケージを採用するケースがありました。消費者がそれ
を評価し、パッケージの小型化で物流・保管費や包装材料費を低減するよ
りも、大型のパッケージで消費者に訴求し売上を伸ばした方が企業はより
大きな利益を得る事ができました。
そんな時代も変わりつつある様です。消費者の間で環境負荷が意識される
様になり、パッケージの大きさで見栄えを良くするよりも、無駄のない包
装で環境負荷低減を真摯に考慮している事を訴えた方が消費者に支持され
る時代になっている様です。
こうした環境負荷低減の意識は先進国に限った事ではありません。むしろ
ASEAN諸国のそれは先進国を上回っています。株式会社電通が日・独・英
・米・中国・インド・インドネシア・マレーシア・フィリピン・シンガポー
ル・タイ・ベトナムの12か国を対象に行った「サステナブル・ライフスタ
イル意識調査2021」によりますと、エコバック使用率では上位はフィリピ
ン(87.3%)・日本(78.8%)・中国(73.8%)の順で、下位は下から米国(28.2%)・
英国(43.8%)・シンガポール(50,7%)となっています。詰め替え商品を買
うの上位はフィリピン(74.3%)・インドネシア(73.7%)・日本(67.8%)、
下位は中国(32.4%)・英国(36.0%)・米国(43.6%)となります。水筒(マ
イボトル)を持ち歩くの上位はインドネシア(72.3%)・フィリピン(72.3%)・
マレーシア(72.0%)、下位は日本(46.4%)・米国(53.0%)・英国(43.6%)
となります。
また、昔は大きいもの・豪華なものが好きな国民性のため日本の小型乗用
車・軽自動車が売れなかった中国で、電気自動車では小型車の宏光Mini
EVがテスラを上回る販売台数を誇っています。こちらは小型である事が評
価されたというよりは、EVで圧倒的な低価格である事が好調の理由と考え
られますが、少なくともこれまでは見栄えが非常に重視された自動車市場
に費用対効果を重視する市場を創り出したと言えるでしょう。
この様にコンパクトな包装を支持する市場はグローバルに広がっています。
貴方も包装仕様をコンパクトにする余地がある案件を担当した際には、こ
うした事例を使って、包装仕様の改善を提案してはいかがでしょう。その
提案はコスト低減のみならず、売上ならびに企業イメージの向上にもつな
がると考えられます。
2022.1.7