vol.56「調達は自由への闘争」
vol.56「調達は自由への闘争」
【今週のトピックス】
「日産自動車は世界的な半導体不足に対応するため、車の設計の一部を見
直し始めた。ブレーキなどに組み込む特注の半導体を産業機械向けのよう
な一般製品で代用できるようにする。」
出所)「日産、汎用半導体で代替」『日本経済新聞』、2021年11月18日、
1面
カテゴリー毎の調達戦略は大別すると「統合」と「自由」との二つに分類
されます。「統合」の調達戦略を採るにはサプライヤを凌駕するマネジメ
ント能力とそれを支える人材が必要となりますので、多くの場面で「自由」
を求める調達戦略が採用されます。
「自由」の調達戦略はサプライヤに貴社の行動が縛られない様に備えるも
のです。例えば、敢えて一部の取引を二番手サプライヤに付与し、メイン
サプライヤにトラブルがあった時に、二番手サプライヤに取引移管できる
様にしておくシェア割は、自由を求める調達戦略の一つと言えます。
今回の日産の取組では、昨今の半導体不足に対応するため、設計を見直し
ブレーキなどに組み込む特注の半導体を産業機械向けのような一般製品で
代用できるようにするものです。
一社のサプライヤしかできないものを採用してしまうと、どんなに貴社が
大口顧客であろうが圧倒的にサプライヤ優位となってしまいます。サプラ
イヤの意向で貴社のサプライチェーンが左右されてしまい、供給トラブル
が生じた時などは、ただサプライヤに供給してもらえる様、懇願するしか
できません。
調達購買業務は基本は要求元が求めるものを調達します。しかしながら、
貴社のサプライチェーンマネジメントの自由を奪う様な要求が要求元から
出された場合、その供給リスクを説明し、要件変更を求めて闘う事も調達
購買部門の仕事と弊社は考えます。さもなければ、どんなに頑張っても貴
社に利益が上がらず、儲かるのはサプライヤばかり、サプライヤのために
貴社は仕事をしているといった事態に陥りかねません。
2021.12.24