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vol.52「サプライヤのスペックインを防げ」

週刊 戦略調達
  【今週のトピックス】   地方自治体が発注するウェブサイトのコンテンツ管理システム(CMS)を巡り、公正取引委員会はスマートバリューとその営業協業先2社に独占禁止法違反(不公正な取引方法)の疑いで立ち入り検査しました。これら2社には、複数の地方自治体に対し、CMSの入札仕様書に「オー ...
当社は支出管理(スペンドマネジメント)・戦略調達(ストラテジックソーシング)・最適購買を支援するソリューション群ならびにこれら業務のマネジメントノウハウと中国・アジア・米国・欧州・中南米をカバーするグローバルソーシングネットワークとを基に1)支出管理並びに調達購買マネジメントのアウトソーシング 2)支出管理・調達購買関連システム導入 3)貴社のグローバル最適購買実現などの支出管理・調達・購買・SCMに関わるプロフェッショナルマネジメントサービスを提供しています。それらのサービスを通じて貴社の「最善の支出管理・調達・購買」を実現することにより、調達購買コスト・物流費用・経費の削減や外部支出ならびにサプライチェーンマネジメントに対する効果の最大化による貴社の競争 ...

vol.52「サプライヤのスペックインを防げ」

 

【今週のトピックス】

 

地方自治体が発注するウェブサイトのコンテンツ管理システム(CMS)を
巡り、公正取引委員会はスマートバリューとその営業協業先2社に独占禁
止法違反(不公正な取引方法)の疑いで立ち入り検査しました。これら2
社には、複数の地方自治体に対し、CMSの入札仕様書に「オープンソース
のソフトウエアを使っていないCMSであること」を要件に盛り込むよう働
きかけ、競合他社の参入を妨げた疑いが掛けられています。

CMSは誰でも利用可能なオープンソースのソフトウエアを使って開発する
ベンダーが多くありますが、スマートバリューはオープンソフトウェアを
使わずに自前でCMSを開発しているといいます。オープンソースのソフト
ウエアを禁じたのはセキュリティ対策が名目とされていますが、実際には
オープンソースを使う競合他社を排除する目的だった可能性があるとの事
です。
参考)「参入妨害疑い 2社立ち入り」『日本経済新聞』、2021年11月3日41面


スマートバリュー社の行為はスペックインという営業手法です。スペック
インとは、設計の段階で自社の商品・工法等を採用してもらうべく、自社
にしか無い仕様を設計・要件に織り込む事を図るものです。


スペックインすべてが独禁法に抵触する訳ではなく、不当なスペックイン
が独禁法上は問題となります。今回のケースは、オープンソースソフトウェ
アの排除がセキュリティ対策として適切とは言えない事が問題となってい
ると考えられます。


しかしながら、スペックイン営業は第三者の目に触れない商談の中で行わ
れているので、それが例え不当なものであってもなかなか明るみになる事
はなく、貴社が独禁法によって守られていると考えるのはちょっと安直と
言わざるを得ません。また、調達購買の観点からは、スペックインは元々
競合他社との競争を妨げるべく、そのサプライヤにしかない特殊・過剰仕
様を織り込もうとするものなので、すべてが貴社に不利に働くものと捉え
ておくべきです。


スペックインを防ぐには技術・設計知識が不可欠なので、担当材が技術バッ
クグラウンドの無い場合にはハードルが高くなりますが、調達購買担当者
としては、それでもその職責を全うする必要があります。その様な場合で
も、以下のテクニックを使う事でスペックインを防ぐ事が可能です。


■すべての仕様・要件の妥当性を疑う
すべての仕様・要件について、何故、その仕様・要件となっているかユー
ザの視点で考えてみましょう。その中で、過剰・特殊仕様と思われるもの、
サプライヤの数を大きく限定するものについては、依頼者にそれが本当に
必要なものなのか、どうしてその仕様・要件が必要かを確認しましょう。
依頼者がそれを説明できない場合、スペックイン営業に絡めとられており、
そのサプライヤの受け売りで指定しているだけで、仕様・要件の妥当性が
なく見直す必要があります。


■サプライヤの力を借りる
技術力・設計能力の高いサプライヤの場合、常識的でない仕様・要件につ
いて指摘してくれる時もあります。その様な指摘があった時には、妥当な
仕様・要件をそのサプライヤに確認し、依頼者に対してそれらの見直しが
可能か、不可能な場合、サプライヤの技術者も交えてその理由を検討しま
す。メーカ指定の場合、敢えて競合メーカの製品について同等品が無いか
を確認し、依頼者に競合メーカの同等品がなぜ不採用なのか理由を聞きま
す。上記の仕様・要件の妥当性の確認とこのサプライヤとのコミュニケー
ションにより、やがてはサプライヤに話を聞かなくとも、依頼者との仕様
・要件の調整に必要な技術・設計知識が身につく様になります。


■開発購買を進める
開発購買とは、設計に入る前の検討初期段階から仕様・要件整理に調達購
買の視点を織り込む事です。調達購買版のスペックインです。スペックイ
ン営業に対し、開発購買で対抗します。上記の二項目をできるだけ早い段
階で実施していきます。特に、自社に設計ノウハウが無く、サプライヤの
支援が必要な案件では開発購買を進めるべきです。その様な案件では設計
が懇意にしているサプライヤ一社に決め打ちで相談しスペックインされて
しまいがちですので、その様な案件でこそ、広くサプライヤから情報を集
め、適切な仕様・要件を設定すべきです。


2021.11.26

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