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vol.98「ソニー/ 取引先も脱炭素。求められる調達戦略のパラダイムシフト」

週刊 戦略調達
  【今週のトピックス】   ソニーグループが専門部隊による取引先の温暖化ガス削減計画を検証する活動を始めています。背景にあるのは温暖化ガスの排出は自社よりも調達先から生じる「スコープ3」と区分されるものが圧倒的に多い事があります。ソニーの調査では20年度のグループ全体のCO2排出量約1 ...
当社は支出管理(スペンドマネジメント)・戦略調達(ストラテジックソーシング)・最適購買を支援するソリューション群ならびにこれら業務のマネジメントノウハウと中国・アジア・米国・欧州・中南米をカバーするグローバルソーシングネットワークとを基に1)支出管理並びに調達購買マネジメントのアウトソーシング 2)支出管理・調達購買関連システム導入 3)貴社のグローバル最適購買実現などの支出管理・調達・購買・SCMに関わるプロフェッショナルマネジメントサービスを提供しています。それらのサービスを通じて貴社の「最善の支出管理・調達・購買」を実現することにより、調達購買コスト・物流費用・経費の削減や外部支出ならびにサプライチェーンマネジメントに対する効果の最大化による貴社の競争 ...

vol.98「ソニー/ 取引先も脱炭素。求められる調達戦略のパラダイムシフト」

 

【今週のトピックス】

 

ソニーグループが専門部隊による取引先の温暖化ガス削減計画を検証する
活動を始めています。背景にあるのは温暖化ガスの排出は自社よりも調達
先から生じる「スコープ3」と区分されるものが圧倒的に多い事がありま
す。ソニーの調査では20年度のグループ全体のCO2排出量約1847万トンの
内スコープ3が9割を占めるとの事です。
参考)「ソニー、取引先も脱炭素」『日本経済新聞』2022年8月22日
(https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220807&ng=DGKKZO63252160W2A800C2EA5000
閲覧日:2022年11月16日)


CO2排出量の排出量の殆どが自社からのものでなく、サプライチェーンか
らのものというのは当然と言えるもので、例えば、財務省の年次法人企業
統計調査から計算すると2021年の金融・保険を除いた全産業のコストの内、
社内人件費等を除いた外部支出は85%です。


外部支出には電力等のエネルギー調達に関連する「スコープ2」も含まれ
ますのでソニーの数字の9割より少し小さいですが、コストと経済活動と
はほぼ等しいと考えられますので、金融・保険を除いた全産業をならし
てみると自社事業に関わる8割5分の経済活動は自社以外のサプライチェー
ンで行われていると言っても良いでしょう。


そうなってくると温暖化ガスの削減についても自社ではなくその主要な排
出元となる調達先に着目する事になりますが、サプライヤの温暖化ガス削
減にあたってはやはりそのサプライヤの工程だけで検討しても効果はかな
り限定的となりますので、その先のサプライチェーンを遡っていく必要が
あります。しかしながら、かなりの大手を除き、自社のみならずサプライ
チェーン全体での温暖化ガスの削減に取り組める企業は限られるでしょう
から、ソニーの様な大企業は率先して取引先の中小サプライヤを支援して
いく必要があります。


同じ様な検討が必要なものにサプライリスクマネジメントがあります。供
給リスクを考えた時にリスク要因がそのサプライヤにある事は殆どなく、
その先ないしはその先の先といったサプライヤにある事が殆どでサプライ
ヤのサプライチェーンをかなり遡る必要があります。


こうした潮流は調達戦略のパラダイムシフトを各企業に迫っていると弊社
では考えます。これまでは一部の支配のサプライチェーン戦略を取る企業
を除き、サプライヤをその時のコスト競争力に応じて切り替えられる自由
を求める調達戦略が基本でした。弊社も内製ではなく外部調達をするのは
その自由に価値があると考えていました。しかし、現在は、リスクマネジ
メント・ESGの観点からサプライヤのサプライチェーン迄を把握する必要
があり、その把握に掛かる工数分だけサプライヤの切替コストが上がって
います。


そういった意味ではサプライヤの切替の容易な汎用品や期間限定の短期的
な取引を除いたすべてのサプライヤ選定において、


1) 初回の選定ではコスト競争力のみならず、リスク管理やESG対応を含め
たサプライチェーンマネジメント能力とその改善への協力意欲も含めた厳
密な評価によるサプライヤ選定


2) サプライヤ間の競争ではなく、選定したサプライヤとの中長期に亘る
深いコミュニケーションによるサプライヤのQCDMの改善


に調達購買部門の役割がシフトすると予想されます。特に後者では調達購
買スタッフに求められる役割が、これまでのサプライヤ間の競争や交渉に
よるコスト低減からサプライヤのサプライチェーンの把握とそのサプライ
チェーントータルのQCDM改善に大きく変わるため、そこで求められる能力・
スキルも大きく変わって来ます。


弊社では貴社でも調達購買部門のプロセス・人・組織・テクノロジーをこ
の方向にシフトさせる事をお勧めします。


2022.11.18

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