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vol.97「取引基本契約に物価スライド条項が必須に」

週刊 戦略調達
  【今週のトピックス】   建設資材高騰分の請負代金への転嫁が民間建築工事ではなかなか進まない事を背景に日本建設業連合会(日建連)の宮本洋一会長が公共工事と同様に民間工事においても契約約款に「スライド条項」を盛り込むべきだと訴えています。出所)星野 拓美「『民間工事にもスライド条項を』 ...
当社は支出管理(スペンドマネジメント)・戦略調達(ストラテジックソーシング)・最適購買を支援するソリューション群ならびにこれら業務のマネジメントノウハウと中国・アジア・米国・欧州・中南米をカバーするグローバルソーシングネットワークとを基に1)支出管理並びに調達購買マネジメントのアウトソーシング 2)支出管理・調達購買関連システム導入 3)貴社のグローバル最適購買実現などの支出管理・調達・購買・SCMに関わるプロフェッショナルマネジメントサービスを提供しています。それらのサービスを通じて貴社の「最善の支出管理・調達・購買」を実現することにより、調達購買コスト・物流費用・経費の削減や外部支出ならびにサプライチェーンマネジメントに対する効果の最大化による貴社の競争 ...

vol.97「取引基本契約に物価スライド条項が必須に」

 

【今週のトピックス】

 

建設資材高騰分の請負代金への転嫁が民間建築工事ではなかなか進まない
事を背景に日本建設業連合会(日建連)の宮本洋一会長が公共工事と同様
に民間工事においても契約約款に「スライド条項」を盛り込むべきだと訴
えています。
出所)星野 拓美「『民間工事にもスライド条項を』、日建連・宮本会長
を突き動かす人材難への危機感 日本建設業連合会の宮本洋一会長に聞く
(後編)」『日経クロステック/日経アーキテクチュア』2022年10月28日
(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01969/102100018/)


スライド条項とは契約において急激な物価変動時に請負代金の変更を請求
できるとするものです。貴社の取引基本契約の雛形に「経済状況の急激な
変化が生じた場合には取引単価・価格を見直すものとする」といった条項
が入っていれば、それがスライド条項です。


スライド条項の適用が迫られているのは建設業界のみではありません。原
材料および資源高・供給難・円安等から値上げが迫られている品目は多岐
に亘り、すべての買い手企業にスライド条項が迫られています。


物価上昇基調の現時点ではスライド条項は値上げにつながるため買い手企
業から見れば好ましくないと思われるかもしれませんが、物価下落時には
コスト低減の機会となります。また、スライド条項が無い場合、サプライ
ヤとしては将来の自社調達コストの上昇を見越してのバッファーとしてマー
ジン率を高めに設定せねばならず、結局は高値づかみとなる可能性があり
ます。弊社は購入単価決定における調達購買部門の役割は買い叩く事では
なく適正な価格を設定する事にあると考えていますので、スライド条項を
契約に設ける事は賛成です。


以前は買い手側の方がサプライヤに対する交渉力に勝っており、スライド
条項どころか、一定期間、価格を固定する価格ロックイン条項を契約に入
れる買い手企業が多くありました。その背景にはそういった企業の調達購
買担当者としては値上げの際には会社に対する説明責任が面倒、場合には
よっては、自社が顧客に対して価格ロックインを約束しており、調達コス
ト上昇リスクを回避するため、営業や経営層が同じ条件の価格ロックイン
条項をサプライヤに押し付ける様に求めているといった事があります。


スライド条項を含めた取引条件は交渉で確定します。しかしながら、現在
から今後はサプライヤも買い手企業に対する交渉力をつけており、価格ロッ
クイン条項は問題外、スライド条項を受け入れないと取引ができないといっ
た場面が多く出てくると予想されます。


調達購買部門としては調達力の更なる強化により交渉力を強化しつつ、自
社経営層・営業に対しこれまでの様に中長期で調達価格を一定期間保つ事
がむずかしくなっており、自社顧客への販売契約においてもスライド条項
を入れる・価格ロックイン条項を入れない様にアラート上げる必要があり
ます。


2022.11.11

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