vol.94「アイリスオーヤマ/ 機動的に組み替えられるサプライチェーンの構築へ」
vol.94「アイリスオーヤマ/ 機動的に組み替えられるサプライチェーンの構築へ」
【今週のトピックス】
「アイリスオーヤマ(仙台市)は、中国3工場で製造しているプラスチッ
ク製品の一部について生産を日本国内に移管する。中国から日本への輸出
にあたり、円安長期化や海上運賃の高騰などでコストが上昇していること
に対応する。東アジアを巡る安全保障環境などの変化も踏まえ、さらなる
生産移管やサプライチェーン(供給網)分散も視野に入れる。
生産移管の対象はプラスチック製の収納ボックスやプランターなどの容器
類だ。中国子会社が大連、天津、広州の3拠点で製造。多くを日本に輸出
している。(中略)
一般的に製造業が海外から生産移管をする場合、工場のラインや設備、人
員確保やオペレーション準備に最低でも数カ月かかるとされる。同社は各
工場で稼働率を7割に抑え、常に急な増産などに対応できる体制をとる。
ロボットによる自動化を進め、短期間でスムーズな生産移管ができること
も背景にある。(中略)
電子部品など戦略部品の調達難を背景に、アイリスは21年にサプライチェー
ンマネジメント部を立ち上げた。それまで工場や現地法人ごとに在庫や部
品を管理する体制だったが、本社で一括管理する方式を取り入れた。」
出所)「アイリス、プラ製品生産を一部国内移管」
『日本経済新聞』2022年8月25日 (https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC246IW0U2A820C2000000/
閲覧日:2022年10月17日)
今回のケースの様に、現在、為替・海上運賃・地政学リスクの観点から中
国一辺倒のサプライチェーンの見直しが各社に迫られています。今回はた
またま日本国内への生産回帰となりましたが、今後、日本に続々と生産が
戻ってくるという事ではなく、為替・原材料市況・地政学リスクに応じて
グローバルに機動的に調達先・生産拠点を見直し、サプライチェーンを組
み替えられる体制づくりが迫られていると弊社は考えます。
今回アイリス社が生産拠点を移す要因になったのは主に為替と海上運賃の
高騰というそれぞれの市場動向によるもので、中長期的な構造的変化によ
るものではありません。為替・海上運賃や原材料価格等の動向によって、
再び国内生産ではなく海外生産でないと価格競争力に劣るという事態に陥
る事も大いにあり得ます。地政学リスクについては高まる事こそあれ、リ
スクが収束し安定した経営環境が整うという事は短中期的には見込めませ
ん。
グローバルに最適な調達先・生産拠点を選び直し機動的にサプライチェー
ンを組み替えられる体制づくりのヒントを今回のケースは与えてくれてい
ます。
・グローバルに最適な調達先・在庫ならびに生産拠点を決定するには、各
工場や現地法人にそれらの管理を任せるのではなく、グローバルに一元管
理
・工場の標準時の稼働率を7割に抑え常に急な増産などに対応できる体制
・ロボットによる自動化を進め短期間でスムーズな生産移管を可能に
アイリス社のこうした取組を参考に貴社でも機動的にサプライチェーンを
組み替えられる体制づくりを進めていくべきと弊社は考えます。
2022.10.21