logo

ナレッジ

vol.91「ヤフー/ 需要の平準化で配送コスト低減」

週刊 戦略調達
  【今週のトピックス】   ヤフーは「アスクルのネット通販『LOHACO(ロハコ)』で通常より数日遅い配達を選べる実証実験を始める。対象は10月9日までの日曜日。特典としてスマートフォン決済『PayPay(ペイペイ)』のポイントを付与して利用を促す。日曜日は注文が集中するため、配達日を ...
当社は支出管理(スペンドマネジメント)・戦略調達(ストラテジックソーシング)・最適購買を支援するソリューション群ならびにこれら業務のマネジメントノウハウと中国・アジア・米国・欧州・中南米をカバーするグローバルソーシングネットワークとを基に1)支出管理並びに調達購買マネジメントのアウトソーシング 2)支出管理・調達購買関連システム導入 3)貴社のグローバル最適購買実現などの支出管理・調達・購買・SCMに関わるプロフェッショナルマネジメントサービスを提供しています。それらのサービスを通じて貴社の「最善の支出管理・調達・購買」を実現することにより、調達購買コスト・物流費用・経費の削減や外部支出ならびにサプライチェーンマネジメントに対する効果の最大化による貴社の競争 ...

vol.91「ヤフー/ 需要の平準化で配送コスト低減」

 

【今週のトピックス】

 

ヤフーは「アスクルのネット通販『LOHACO(ロハコ)』で通常より数日遅
い配達を選べる実証実験を始める。対象は10月9日までの日曜日。特典と
してスマートフォン決済『PayPay(ペイペイ)』のポイントを付与して利
用を促す。日曜日は注文が集中するため、配達日を分散させ物流や環境の
負荷軽減につなげる。


サービス名は「おトク指定便」。希望の配達日を遅らせるほどPayPayポイ
ントの還元率を上げる。還元率は検討中で、効果が確認できればヤフーの
電子商取引(EC)サイト『Yahoo!ショッピング』全体への拡大も検討す
る。


EC業界では翌日配送など配達の速さを競ってきた。新型コロナウイルス禍
の巣ごもり需要でECが拡大したことや慢性的な人手不足も影響し、宅配ド
ライバーの需給は逼迫している。急がない利用者に数日後の配達を促し、
物流への負荷を下げる狙いだ。」
出所)「ヤフー、ロハコで期日遅い配送便」『日本経済新聞』2022年8月24日
(https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20220824&ng=DGKKZO63694090T20C22A8TB2000
閲覧日:2022年9月25日)


ご存じの通り、価格の決定要因の一つに需給バランスがあります。供給が
逼迫していれば価格は上昇します。


2020年以降、運転手を中心とした労働力不足で国内陸運の運賃は上昇傾向
にあります。その一つにはEC業界を中心とした翌日・当日配送といった配
達の速さを競う競争です。配達日数を短縮しようとすれば、積載率を無視
して配達速度を優先せざるを得ません。積載効率が下がれば、便数を増や
さざるを得ず、便数を増やすには運転手の増員が必要となります。そのた
め運送会社各社は運転手を確保するために給与を上げざるを得ず、それが
運賃にも反映される事となっています。


コスト低減の手法の一つにサプライヤの採算改善への協力があります。サ
プライヤの採算を改善すれば値下げの余地が生まれるので、そこから生じ
た値下げ余地を価格に反映させるものです。


固定費の採算改善にはその設備・資産効率の改善が有効です。設備・資産
効率改善方法としてはキャパシティマネジメントと需要の平準化がありま
す。


ピークに合わせて投資しキャパシティを拡大してしまうと、そのキャパシ
ティに見合った仕事量を非ピーク時にも確保する必要が生じます。特に、
ピークと非ピーク時との需要の変動が大きい場合には、ピーク時にキャパ
シティを合わせてしまうと非ピーク時の稼働率が大きく下がってしまいま
す。一方で、キャパシティに制約があると、それを超える案件の受注がで
きなくなるので、単純にキャパシティを絞れば良いという話でもなく、サ
プライヤがどの様な事業を志向するのかという戦略に基づく意思決定が必
要です。


このピークと非ピーク時との需要の差を小さくし、平均して設備・資産の
稼働率を上げようというのが需要の平準化です。トヨタのJITの前提にも
この需要の平準化が置かれています。需要が平準化すれば設備・資産の平
均稼働率が上がりますし、需給ギャップに備えるためのまとめ生産による
在庫を抱えずに済み、在庫のムダも無くなるという発想です。


今回のケースの配送リードタイムに猶予を設ける試みは、配送会社(サプ
ライヤ)により計画的に配送手配を組む機会を設け、日々の需要のバラつ
きを猶予期間の間でならす事により需要の平準化を行い、サプライヤの積
載効率を改善するものです。配送業務委託の仕様として、恐らく、配送リー
ドタイムが通常より長めに設定されているでしょう。

 

そこ効果として以下の三点が考えられます。
1) サプライヤの採算改善の還元によるコスト低減
2) 要求水準・キャパシティに猶予が出た事によるより多くのサプライヤ
との取引可能性・配送能力の確保
3) より多くのサプライヤ間での競争によるコスト低減


サプライヤに単純に価格もサービスもと求める事はできます。しかしなが
ら、過度なサービスレベル・品質を求める事で、実は貴社にとって最善の
サプライヤとの取引を失っているかもしれません。適切な仕様設計がコス
ト低減となります。


安易に他社が当日・翌日配送をしているからといった理由でウチもと同質
競争に陥るのではなく、配送スピードよりも価格(ポイント)を求める顧
客を囲い込むといった異なる競争軸を持ち込む方が競争戦略上は優位と考
えます。孫氏曰く「 戦わずして人の兵を屈するは善の善なるものなり。」
です。


2022.9.30

©2024 Samurai Sourcing, Inc.  All rights reserved.