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vol.76「脱炭素が調達購買業務に与える影響」

週刊 戦略調達
  【今週のトピックス】   「欧州鉄鋼大手SSABは近く、『水素還元製鉄』と呼ばれる製造法でつくり、二酸化炭素(CO2)排出量を大幅に抑えた鋼材の供給を日本で始める。石炭の代わりに水素を使った製鉄法で、脱炭素の将来的な切り札とされる。物流や原材料などを含めたサプライチェーン(供給網)全 ...
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vol.76「脱炭素が調達購買業務に与える影響」

 

【今週のトピックス】

 

「欧州鉄鋼大手SSABは近く、『水素還元製鉄』と呼ばれる製造法でつくり、
二酸化炭素(CO2)排出量を大幅に抑えた鋼材の供給を日本で始める。石
炭の代わりに水素を使った製鉄法で、脱炭素の将来的な切り札とされる。
物流や原材料などを含めたサプライチェーン(供給網)全体で大部分を占
める製造時でのCO2排出をゼロ近くに抑えた。スウェーデンのボルボなど
が採用しており、日本での投入は初めて。」
出所)「水素で製鉄、CO2大幅減」『日本経済新聞』2022年5月24日朝刊
13面


今回のケースでは脱炭素化の要請が調達購買業務に与える影響について考
えます。ロシアのウクライナ侵攻による欧州への天然ガスの供給難で現在
は短期的に若干トーンダウンした感がありますが、中長期的に脱炭素化に
向けた動きは止まる事は無いでしょう。脱炭素化の動きは調達購買業務に
1. 現在購入しているモノで二酸化炭素排出量が少ない代替品の調達
2. 貴社の脱炭素化への転換に関連した調達
という二つの課題を与える事となります。


1. 現在購入しているモノで二酸化炭素排出量が少ない代替品の調達
こちらは調達購買業務に大きな変化を与えるものではなく、あくまでも現
在調達しているものの代替品の探索となります。鋼材ユーザの立場で見れ
ば、今回のSSAB品の様に仕様の一つに二酸化炭素排出量が非常に少ない、
もしくはゼロであることといった要件が加わる事となる変化です。


2.貴社の脱炭素化への転換に関連した調達
こちらはSSABの調達購買担当の様な立場で、自社の脱炭素化を果たすた
めに必要な原材料・製造技術・物流方法の変更等、事業・製品開発的な調
達となります。これまでと全く異なるモノを調達する事になる場合もある
でしょうし、技術的にはまだ実現化していないものもあるでしょう。


今回のケースでは石炭の代わりに水素を使い鉄鉱石から鉄を取り出します。
この水素についてもそのサプライチェーンにおいて二酸化炭素を排出しな
いグリーン水素である必要があります。グリーン水素は水を電気分解して
製造する必要があり、その電気も再生可能エネルギー等の非化石燃料電源
で発電されたものでなければならず、そうしたグリーン水素を安価に大量
に供給できる国となると現時点では限定的になります。

 

こうしたものの調達では関連情報が一般的になっておらず、研究論文等か
ら集めなければならない等、難度が高いものとなるでしょう。調達購買担
当者としては、貴社が必要としている素材や技術情報を把握し、広く情報
収集を行っていく事から始めなければならないかと存じます。


2022.6.10

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