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vol.69「買い手の行き当たりばったりのサプライヤ選定は百害あって一利なし」

週刊 戦略調達
  【今週のトピックス】   「審査の結果、1位と2位の評価点が僅差だったために両者と交渉し、2位の事業者を選定した――。京都府和束町の「和束町総合保健福祉施設設計業務公募型プロポーザル」における設計者選定プロセスが物議を醸している。審査で1位となった事業者を受注候補者として交渉し、まと ...
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vol.69「買い手の行き当たりばったりのサプライヤ選定は百害あって一利なし」

 

【今週のトピックス】

 

「審査の結果、1位と2位の評価点が僅差だったために両者と交渉し、2位
の事業者を選定した――。京都府和束町の「和束町総合保健福祉施設設計
業務公募型プロポーザル」における設計者選定プロセスが物議を醸してい
る。審査で1位となった事業者を受注候補者として交渉し、まとまらなけ
れば2位と交渉するというルールを町が自ら破ったうえ、そのことについ
て丁寧に説明していないからだ。」
出所)坂本 曜平「和束町がプロポーザルでルール破り、審査結果に従わ
ず施設設計者を選定」『日経XTECH』2022年3月11日
(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00154/01405/
閲覧日2022年3月28日)


サプライヤに約束した選定プロセスを破ったケースです。約束した選定プ
ロセスを破る事はデメリットしかありません。正に百害あって一利なしで
す。


まず初めに、入札・相見積の後に交渉プロセスを入れるという事は、「サ
プライヤは最善価格を提示する」という入札・相見積の大前提を買い手自
らが否定する事となります。後で交渉でベストプライスを提示したサプラ
イヤを逆転する事ができるというのでは、各サプライヤが最初は少し様子
を見て最善の価格を提示するのを控えてしまい、競争環境が形骸化してし
まいます。その上、入札・見積後の複数社を相手にした不毛な交渉を長時
間・お互いに労力を掛けて続けて行く事となり、選定プロセスがグダグタ
となってしまいます。


次に、最安値を提示したのに選外となった企業にしてみれば、買い手に対
し不信感しか残らず、その企業から今後の入札・見積への参加・協力が得
られなくなってしまいます。有力なサプライヤの不参加は以降の案件での
競争環境の形骸化につながります。


また、こうした不公正な選定は選定者と選定サプライヤとの間に癒着があ
るのではといった疑いの念を周囲に引き起こします。他のサプライヤがこ
うした疑いを持てば、これらの企業からの入札・見積への協力が得られな
くなり、これも競争環境の形骸化となります。


更に、担当者の選定結果を正当な理由なく覆しては、担当者のモチベーショ
ンダウンとなります。記事では選定委員会で委員長を務めた長坂教授の以
下のコメントが紹介されています。「『時間と労力をかけて審査し、選定
結果を取りまとめたにもかかわらず、その結果を町が覆した。裏切られた
ような感覚で、極めて不愉快だ。町は詳細な経緯を公表すべきだ』と怒り
をあらわにする。」企業でいえば経営者が和束町、担当者が選定委員会に
あたり、もし経営者が和束町と同じ様な行動を取れば、担当者は長坂教授
の様な怒りを抱くでしょう。


もし、どうしても僅差の場合に最終交渉を入れたいのであれば、「評価点
の差が##点以内の場合には、その範囲の中にある入札者との交渉で決定す
る」といったルールを入札要綱・見積依頼書に入れるべきでした。しかし
ながら、弊社は入札・見積の後に交渉プロセスを入れるのはお勧めしませ
ん。それは冒頭に上げたサプライヤは最善価格の提示するという入札・相
見積の大原則を崩す事に他ならないからです。入札・見積の後に設けられ
るべきものは、後で「やっぱりこの価格ではできませんでした」とサプラ
イヤが匙を投げる事がないように見積前提や見積に誤りがないかの確認と
サプライヤの専門知識を活かした仕様の最適化による価格の最適化であっ
て、交渉ではないと弊社では考えます。


2022.4.8

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