logo

ナレッジ

...
当社は支出管理(スペンドマネジメント)・戦略調達(ストラテジックソーシング)・最適購買を支援するソリューション群ならびにこれら業務のマネジメントノウハウと中国・アジア・米国・欧州・中南米をカバーするグローバルソーシングネットワークとを基に1)支出管理並びに調達購買マネジメントのアウトソーシング 2)支出管理・調達購買関連システム導入 3)貴社のグローバル最適購買実現などの支出管理・調達・購買・SCMに関わるプロフェッショナルマネジメントサービスを提供しています。それらのサービスを通じて貴社の「最善の支出管理・調達・購買」を実現することにより、調達購買コスト・物流費用・経費の削減や外部支出ならびにサプライチェーンマネジメントに対する効果の最大化による貴社の競争 ...

vol.73「非同期コミュニケーションのマナーとルール」

 

【今週のトピックス】

 

今回はテレワーク環境下での社内コミュニケーションの先進企業から非同
期コミュニケーションのマナーやルールを学びます。


非同期コミュニケーションはメールやチャット等の対話者が自分の都合の
良い時に返答をするコミュニケーションを指します。非同期コミュニケー
ションの特徴の一つにメールやチャット等のメディアを介しますので、情
報共有が可能です。


この特徴を活かして「個別チャットよりもチャンネル利用」をルール化し
ている企業があります。業務で分からない事がある時に自分と相手だけで
なく、チームメンバーもそのコミュニケーションに含めるのです。ある人
がつまづいているポイントは他の人にとっても同じ可能性があります。非
同期コミュニケーションは記録に残りますから、複数のメンバーが参照可
能なチャネルを利用する事で、例え、今は他のメンバーが必要としていな
い情報でも、将来には必要となる事もあるでしょう。同じコミュニケーショ
ンでもチャットではなくチャネルを利用するだけでチームの情報資産とな
ります。


「会話の往復が増えたらオンライン会議へ移行」をルール化している企業
もあります。チャットでの会話は音声での会話よりもキー入力の分だけ手
間と時間が掛かります。会話の往復が増えて来ると、その会話は非同期コ
ミュケーションから同期コミュニケーションになってきますので、筆者も
このルールに賛成です。


参考)西村 崇「『テレワーク環境下で気軽に声をかけられない』、課題
解決に効くマナーとルール」日経クロステック、2022年1月19日
https://active.nikkeibp.co.jp/atcl/act/19/00355/021600001/
閲覧日:2022年4月3日)


2022.5.20

vol.72「テレワークの生産性向上にはそのマナー・ルールの確立が有効」

 

【今週のトピックス】

 

弊社のお客様の中には弊社の執務スペースを用意されない会社もあり、そ
うした案件ではコロナ禍の以前からテレワークを中心に執務しています。
テレワークの難しい所はちょっとした会話ができない所にあると感じてい
ました。コロナ禍でテレワークが普及した事もあり、こうした悩みを持つ
会社は増えてきている様です。そうした中でテレワーク環境下での社内コ
ミュニケーションのマナーやルールを確立させようとしている企業が出て
きています。今回はそうしたマナーやルールで参考になりそうなものを取
り上げます。


NTTコミュニケーションズはコミュニケーションの種類をオンライン会議
や電話等の対話者がお互いの時間を共有しリルタイムで話をする同期コミュ
ニケーションと、メール・チャット等の対話者が自分の都合の良い時に返
答をする2.非同期コミュニケーションの二つに分類し、それぞれの特性や
障害に応じたマナー・ルールを提唱しています。この分類はシンプルかつ
良く整理されているので、これらに即してお話していきます。


テレワーク下での同期コミュニケーションの障害の一つには相手の様子が
見えないので声を掛けるのをためらってしまい、そこで必要な情報が得ら
れる業務がスタックしてしまうという点が挙げられます。これを解決する
ルールが「ためらわずに聞く」です。また聞きやすい環境を作るにはチャッ
トツールのステータス表示の活用をルール化し、応対可の時はその旨を表
示させる事を徹底させ、応対可の時は遠慮無く話しかけて良いとするのが
良いでしょう。特にリーダークラス以上など他のスタッフから質問・確認
を受ける立場の方は、忙しかったり、自分の仕事に集中したかったりする
かもしれませんが、その責任においてそうした質問・確認を受ける時間を
1日の中である程度確保する必要があります。可能であれば曜日毎にその
時間帯を明確にしておくと、メンバーもコミュニケーションが諮りやすい
かと考えます。


テレワーク下での同期コミュニケーションにおけるもう一つの障害は話し
かけられる方が集中を妨げられるという点です。弊社ではテレワーク下で
のコミュニケーションのマナー・ルールが徹底されておらず、良くチャッ
トで「今話せますか」という確認が入ります。チャットの通知機能をオフ
にしていないと、これだけでも集中が切れてしまいますし、話せない時に
いちいち返答するのは手間となり、余計に集中がそがれてしまいます。こ
れを回避するには、こちらもチャットのステータス表示を活用し、応対可
以外の時には話しかけないのをマナーとするのが良いかと存じます。また、
ある会社ではこうした時に話しかけられた人は応答・コールバック不要と
しています。考え方としては、話しかけられた方の負担を減らし、話しか
けた方が必要としているのであれば再度掛けなおすかかチャット等でメッ
セージを残す等、必要としている人が行動すべきというものです。


ビデオチャットが普及する中で一つのテーマはビデオ表示をルール化する
か否かです。上司と部下という会話の場合、上司としては表情も含めて様
子を確認したいのでルール化したい所かと思いますが、ここは我慢してビ
デオの利用は個人の判断に任せるとした方がテレワークの普及につながる
と考えます(筆者は相手に好印象を持ってもらいたいので基本的にはビデ
オ表示をオンにしていますが。。。)


長くなりましたので今回はここまでとし、次回は非同期コミュニケーショ
ンのマナー・ルールについてお話します。


参考)西村 崇「『テレワーク環境下で気軽に声をかけられない』、課題
解決に効くマナーとルール」日経クロステック、2022年1月19日
https://active.nikkeibp.co.jp/atcl/act/19/00355/021600001/
閲覧日:2022年4月3日)


2022.5.13

vol.71「EVのサプライチェーンのデザインに調達購買部門の活躍の機会有り」

 

【今週のトピックス】

 

「台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が進める電気自動車(EV)の共同開発
に当初の5倍にあたる約100社の日本企業が参加することが分かった。デン
ソーなどトヨタ自動車の系列企業も加わる。EVには異業種の参入が相次ぐ。
鴻海は部品の規格などを共通化し、受託生産を狙う。」
出所)「鴻海EV連合に国内100社」『日本経済新聞』2022年3月13日朝刊1面


自動車の主流がEVになる中で、自動車のサプライチェーンに変化が生じて
います。製品構造がエンジンを中心とするものから、モータや電池を中心
とするものに大きく変わります。それぞれの製造を得意とするサプライヤ
が異なりますのでこの変化は必然です。


弊社では調達購買部門の主な仕事の一つは「継続的に投資価値を最大化す
るサプライチェーンのデザイン」であると考えています。こうした産業構
造の変革期には新たなサプライチェーンのデザインが必要となります。


EVならびにEV向けの原材料・部品の製造販売に携わる企業の調達購買部門
の方々はこれからしばらくの間、EVのサプライチェーンのデザインに活躍
の機会が生じ、奔走される事になるかと存じます。


2022.4.22

vol.70「生分解性プラスチックを使用しないと批判に晒される時代がやってくる」

 

【今週のトピックス】

 

「カネカは2024年までに海洋生分解性プラスチックの生産量を現在の4倍
の年2万トンに拡大する。(中略)


海外大手のホテルチェーンや食品メーカーなどからも納入要請があり、
『既存のプラスチックから一気に置き換えが加速する』(田中稔社長)と
みる。今回の投資を手始めに30年までに国内外で生産能力を年10万~20
万トンに引き上げを検討する。」
出所)「海で溶けるプラ、カネカが増産」『日本経済新聞』2022年2月7
日朝刊5面


海に漂着したプラスチックごみを海洋生物が誤って摂取してしまい、その
生命を危機に晒してしまう事などから、生分解性でないプラスチックの使
用に批判が高まっています。


現時点ではカネカの海洋生分解性プラスチックの価格はそうではない一般
のプラスチックの2倍となりますが、同社はその引合の強さから生産量を
引き上げ、30年迄には現在の40倍に迄持っていこうとしています。


特に、消費材においては、生分解性プラスチックを使用しないと批判に晒
される時代がすぐにやってくるかもしれません。


2022.4.15

vol.69「買い手の行き当たりばったりのサプライヤ選定は百害あって一利なし」

 

【今週のトピックス】

 

「審査の結果、1位と2位の評価点が僅差だったために両者と交渉し、2位
の事業者を選定した――。京都府和束町の「和束町総合保健福祉施設設計
業務公募型プロポーザル」における設計者選定プロセスが物議を醸してい
る。審査で1位となった事業者を受注候補者として交渉し、まとまらなけ
れば2位と交渉するというルールを町が自ら破ったうえ、そのことについ
て丁寧に説明していないからだ。」
出所)坂本 曜平「和束町がプロポーザルでルール破り、審査結果に従わ
ず施設設計者を選定」『日経XTECH』2022年3月11日
(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00154/01405/
閲覧日2022年3月28日)


サプライヤに約束した選定プロセスを破ったケースです。約束した選定プ
ロセスを破る事はデメリットしかありません。正に百害あって一利なしで
す。


まず初めに、入札・相見積の後に交渉プロセスを入れるという事は、「サ
プライヤは最善価格を提示する」という入札・相見積の大前提を買い手自
らが否定する事となります。後で交渉でベストプライスを提示したサプラ
イヤを逆転する事ができるというのでは、各サプライヤが最初は少し様子
を見て最善の価格を提示するのを控えてしまい、競争環境が形骸化してし
まいます。その上、入札・見積後の複数社を相手にした不毛な交渉を長時
間・お互いに労力を掛けて続けて行く事となり、選定プロセスがグダグタ
となってしまいます。


次に、最安値を提示したのに選外となった企業にしてみれば、買い手に対
し不信感しか残らず、その企業から今後の入札・見積への参加・協力が得
られなくなってしまいます。有力なサプライヤの不参加は以降の案件での
競争環境の形骸化につながります。


また、こうした不公正な選定は選定者と選定サプライヤとの間に癒着があ
るのではといった疑いの念を周囲に引き起こします。他のサプライヤがこ
うした疑いを持てば、これらの企業からの入札・見積への協力が得られな
くなり、これも競争環境の形骸化となります。


更に、担当者の選定結果を正当な理由なく覆しては、担当者のモチベーショ
ンダウンとなります。記事では選定委員会で委員長を務めた長坂教授の以
下のコメントが紹介されています。「『時間と労力をかけて審査し、選定
結果を取りまとめたにもかかわらず、その結果を町が覆した。裏切られた
ような感覚で、極めて不愉快だ。町は詳細な経緯を公表すべきだ』と怒り
をあらわにする。」企業でいえば経営者が和束町、担当者が選定委員会に
あたり、もし経営者が和束町と同じ様な行動を取れば、担当者は長坂教授
の様な怒りを抱くでしょう。


もし、どうしても僅差の場合に最終交渉を入れたいのであれば、「評価点
の差が##点以内の場合には、その範囲の中にある入札者との交渉で決定す
る」といったルールを入札要綱・見積依頼書に入れるべきでした。しかし
ながら、弊社は入札・見積の後に交渉プロセスを入れるのはお勧めしませ
ん。それは冒頭に上げたサプライヤは最善価格の提示するという入札・相
見積の大原則を崩す事に他ならないからです。入札・見積の後に設けられ
るべきものは、後で「やっぱりこの価格ではできませんでした」とサプラ
イヤが匙を投げる事がないように見積前提や見積に誤りがないかの確認と
サプライヤの専門知識を活かした仕様の最適化による価格の最適化であっ
て、交渉ではないと弊社では考えます。


2022.4.8

vol.68「テレワークを妨げる三つの原因」

 

【今週のトピックス】

 

日経BP総合研究所イノベーションICTラボが2021年10月に実施した「働
き方改革に関する動向・意識調査」によると、テレワークを利用していな
い理由の首位は「同僚(上司や部下を含む)や取引先、顧客と直接対話し
たいから」「職場(または派遣・常駐先)で扱う帳票や文書の電子化が進
んでいないから」「出社することでON/OFFを区分し、心身を仕事モードに
切り替えたいから」の3つが回答の22.1%で並びました。


一方で、「勤務先(または派遣・常駐先)がテレワークに必要なITシス
テム・インフラを整えていないから」は2020年4月の同調査では回答42.4%
を占めましたが、2021年10月調査では10.4%と32ポイント減っています。
この1年半でテレワーク向けの従業員の勤務環境の整備が進んだ事が伺え
ます。出所)大和田 尚孝「働き方改革を阻害する3大要因、解決が最も
遠い『あの問題』」日経BP総合研究所イノベーションICTラボ、2022.01.12
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01856/010600010/?P=2
閲覧日:2022年2月20日)


上記の内、相手と直接話したいと出社することでON/OFFを区分し心身を
仕事モードに切り替えたいとは心の持ち様の問題で無いものねだりと考え
ます。コロナ禍もあり、ここ2年でテレワークは急速に広まっており、貴
社が実施していないくても、サプライヤはテレワークを実施しているとい
う場合は多々あります。また、サプライヤが海外の場合には、まだまだ気
軽に出張して対面での打ち合わせを行うというのは容易ではありません。
コロナ禍も未だに収束の気配は無く、変異株の流行による感染の拡大で、
再び貴社や相手方の方針で強制的に対面での打ち合わせが一切禁じられる
という事態も想定されます。


この様に考えると、対面での対話ができない事を想定し、web会議での打
ち合わせに慣れていくしかないかと考えます。個々人の受け止め方の問題
はありますが、ビデオチャットを使えば相手の表情も見え、ほぼ対面での
打ち合わせに代替できると弊社では考えます。またweb会議での打ち合わ
せには打ち合わせの移動時間を無くすという大きなメリットがありますの
で、そのメリットを大いに享受すべきと考えます。


出社することでON/OFFを区分し心身を仕事モードに切り替えたいという
点につきましては、今後も出社ができない時が出て来ると考えられますの
で、自分なりの気持ちの切り替え方法を確立しておく必要があります。現
在はこうした需要を見越して、企業側で個室スペースを用意する所も出て
きていますので、そうした環境を提供している会社に属されている方はそ
れらを利用するのが一つの手でしょう。そうした制度が無い企業の方々の
場合には、個人でそうした環境を整えるしかありません。しかしながら、
自宅にミニ書斎を設ける事ができるキットや個人用テレワークブース提供
サービス等が手軽な価格で色々と出回っていますので、環境を整えないと
気持ちの切り替えができないという方にはそれらを利用される事をお勧め
します。良い仕事をするための投資と考えれば費用対効果は大きいと考え
られます。また、こうした環境を自宅ないしは自宅の近くに設ける事で、
通勤時間を大幅に削減できるというメリットもあります。


「職場で扱う帳票や文書の電子化が進んでいないから」は企業側の問題で
す。子供がいる家庭等、柔軟な働き方を求めるスタッフは増えています。
企業側も平時は毎日をテレワークとする必要はありませんが、月の何日か
はテレワークを従業員が選択できる様にし、スタッフのテレワークを前提
とした業務環境・プロセスの構築が今後は不可欠と弊社では考えます。本
来であれば、上記のテレワークに掛かる経費は必要経費として企業が負担
すべきものと考えます。テレワークの推進により通勤交通費・出張旅費や
オフィススペースを削減している場合には賃料も大きく削減されています
ので、新たにテレワークで生じる経費についてはそれらで十分に賄う事が
できるでしょう。スタッフが良い仕事をできる様に環境を整えるのは企業
の責任であり、良い人材はそうした点に配慮できる企業に集まる様になる
と弊社では考えます。


2022.4.1

vol.67「物価スライド条項が一般的になる?」

 

【今週のトピックス】

 

「建物物の鉄筋に使う異形棒鋼の取引価格が、13年4カ月ぶりに1トン10
万円を超える高値水準まで急上昇した。指標品は前月比8%高い。(中略)


異形棒鋼は電炉の鉄鋼メーカーが主に製造している。値上がりの主因は原
料に使う鉄スクラップの高騰だ。鉄筋くずなどからなる標準品種『H2』
の電炉の鉄鋼メーカーの買値は、東京地区で現在1トン5万7000円前後。1月
下旬に付けた直近の安値と比べ9%高い。08年8月以来の高値圏にある。中
国の景気刺激策の強化による鋼材消費の拡大観測などを背景に急速に値上
がりした。


原油や液化天然ガス(LNG)の高騰で電力価格が上昇し、電炉のエネルギー
コストも大きく膨らむ。製鋼の際に脱酸素剤として使うフェロシリコンな
どの合金鉄も昨夏から高止まりしている。(中略)


コスト高が重くなってきた棒鋼メーカー側は製造コストの変動を迅速に価
格に反映できるよう、商習慣の見直しも求める構えだ。棒鋼は使用する建
物の工事期間が始まる前にメーカーとゼネコンが商社を経由して必要量を
まとめて契約するのが一般的だ。契約から実際の納入完了までに1年以上
の時間が空くことも少なくない。(中略)


このためメーカーや商社はゼネコンに棒鋼の短納期化や契約期間の短縮を
要請している。棒鋼メーカーの幹部は『契約から納入完了までを四半期も
しくは半期に短縮することが理想』と話す。(中略)


ゼネコンにとっては施主と決める建設予算の組み方に変更が生じるため、
『商習慣の見直しは一筋縄ではいかない』(鉄鋼商社)。」
出所)「鉄筋用棒鋼、13年ぶり高値」『日本経済新聞』2022年3月4日朝
刊 21面


値決めの時期が納品時期と大きく乖離する建築資材等のケースです。この
事例の様に、建築資材では値決めから実際の製造・納品が数年先となる事
が少なくありません。この場合、サプライヤはその原材料等の市況の変化
による製造コスト増のリスクを抱える事となります。当然、サプライヤも
そのリスクを見越して見積にある程度のリスクプレミアムを載せています
が、競合との競争がある中で、見積に含められるのは限定的とならざるを
得ません。輸入品や原材料等に輸入品を使用している品目では、為替の影
響もあり10%超のコスト高となる事も珍しくありません。


デフレ基調にある日本国内での取引であれば、買い手企業のエンド顧客と
の契約が同様の条件となっているため、こうした値決めと製造・納品時期
のずれを受け入れる様にサプライヤと交渉する事もできるかもしれません
が、輸入品や採算が厳しくなる中で原材料等に輸入品を使用している品目
ではサプライヤはこのリスクを受け入れないでしょう。


こうした品目の取引では今回のケースの様に短納期化や単価の適用期間の
短縮等により値決めと製造・納品時期をできる限り近づける必要がありま
す。どうしてもこれらが難しい場合には、市況変動を反映する物価スライ
ド条項を設ける手もあります。


こうした手法はサプライヤのリスクを除く事になりますので、現在の価格
に織り込まれているリスクプレミアムを取り除く事が可能になります。ま
た、製造・納品時期に市況が下がっている時の高値掴みリスクを減らすと
いったメリットもあり、より適正な価格での取引が可能となります。


一方で、こうした条件を貴社のお客様との契約にも反映しないと貴社がこ
の価格変動リスクをすべて負う事になりますので、営業部門も含めて、貴
社のお客様との価格決定方法を変えるか、貴社でそのリスクを負うかの検
討も必要となります。


2022.3.25

vol.66「日本自動車部品工業会会長『カンバン方式見直す必要』」

 

【今週のトピックス】

 

「日本自動車部品工業会(部工会)の尾堂真一会長(日本特殊陶業会長)
は21日の記者会見で、『(在庫を極力持たない)カンバン方式は見直す必
要がある」と語った。』
出所)「部工会会長『カンバン方式見直す必要』」2021年12月22日、
電子版(https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20211222&ng=DGKKZO78649060R21C21A2TB2000
閲覧日:2022年1月28日)


供給難が起こる度にカンバン方式が問題の元凶とやり玉にあがります。果
たして、抜本的にカンバン方式そのものを捨てる生産モデルの見直しか、
供給リスクの高い一部部材についてのみ在庫を持つのみの修正とするのか、
トヨタの見解を伺いたい所ですが、弊社では後者になると考えます。


供給難に備え、サプライチェーン全体であらゆる原材料・部材の在庫レベ
ルを引き上げてしまうと、毎日の在庫管理費用が嵩む事となります。また、
商品のライフサイクルが短くなる中でサプライチェーン全体で在庫を抱え
てしまうと、機動的な商品の切り替えが難しくなり、機会損失・不良在庫
リスクを抱える事となります。これらの要素は製品コストを大きく押し上
げます。


そのため、こうした供給難にそなえ在庫を抱えるモデルは有効ではなく、
供給難の発生確率と供給停止による損失を掛け合わせた数字と、在庫保有
によるコスト増とを比較し、それが一致するギリギリの所での在庫保有が
正解になると考えます。


英国元首相のチャーチルであれば「在庫の極小化は最悪のサプライチェー
ンモデルといえる。これまで試みられてきた、在庫の極小化以外のすべて
のサプライチェーンモデルを除けばだが」と表現する所でしょうか。


2022.3.18

vol.65「QDMはどう評価する?」

 

【今週のトピックス】

 

秋田県や千葉県の3海域で政府が公募した洋上風力発電で三菱商事を中心
とする企業連合が総取りする結果となった事が問題となっています。


問題となっているのはその選定方法です。落札した企業連合の事業計画で
示された発電単価は1キロワット時あたり11.99円、13.26円、16.49円
と10円以下の欧州ほどではないものの、次点の企業連合とは5円前後の大
差となりました。


問題視されているのはその運転開始時期の評価方法です。落札企業連合は
2028~30年の運転開始を掲げていますが、選定にあたった経産省による
と数年早い計画を提案した所もあったといいます。自民党の政治家達がこ
の運転開始時期の違いが正しく評価に反映されていないと注文を付けてい
ます。
参考)新井惇太郎「洋上風力、安さか早さか(底流)」『日本経済新聞』
2022年2月22日朝刊 5面


このケースはサプライヤの選定方式の一つである総合評価落札方式の課題
を示す端的なケースです。この方式は価格(C)のみで選定するのではなく、
価格と価格以外のQDMの要素とを総合的に勘案して落札者を決定するもの
です。通常は価格も含めたQCDMのそれぞれの評価項目につき、重みと採
点方法を決め、重みx項目毎の点数の合計で落札者を決定します。


今回のケースでは3海域いずれも240点満点で、120点が電気の供給価格、
80点が事業の実施能力、40点が地域経済への波及効果、運転開始時期は
事業能力80点の内の20点の一部でした。価格は最も安ければ120点獲得で
きますが、運転開始はどれだけ早めても20点までしかとれない形となって
います。項目毎の配点の違いに採点に加えて重みが反映されています。


この重みと採点方法に調達者の調達戦略が反映されており、落札結果を見
て重みや採点方法を調整し選定結果を覆す様な事があれば、公正な選定を
保つ事ができません。この様に総合評価方式の問題は1.なぜその重みや採
点方法となるのか説明しきれない 2.担当者の恣意が働く余地があるとい
った課題があります。そのため、弊社ではできる限り、総合評価方式の使
用は避ける様にしています。


総合評価方式の課題の解消には、
1.QDMの要件についてはできる限り足切り基準とする
2.足切り基準とする事ができない場合には、可能な限りその項目のキャッ
シュフローへのインパクトを考え、それをNPVに換算して価格と合算し評

といった手法が有効です。


例えば、2028~30年の運転開始時期が遅いというのであれば、運転開始
時期は2025年迄とする等の足切り基準を設けるべきでした。早ければ早
い方が良いというのであれば、早期運転開始による技術波及効果のNPVを
算出し、その金額を消費者への負担減と合わせて評価すべきです。


足切り基準とする事ができない、もしくはキャッシュフローへの影響を与
えない要件は、重要ではなく、それを要件と掲げている方の単なる好みの
ものでしかないと言わざるを得ないと弊社では考えます。


2022.3.11

vol.64「日本企業も取引先の人権侵害の調査を強化」

 

【今週のトピックス】

 

「強制労働などの人権侵害がサプライチェーン上でないか、日本企業が取
引先の調査を強化する。花王は化粧品や洗剤に用いるパーム油原料の農園
数百万カ所を調べてシステム上で管理するほか、塩野義製薬も製薬材料な
どの生産現場の調査を年内に始める。」
出所)「調達網の人権侵害排除」『日本経済新聞』2021年8月13日、電子
版(https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210813&ng=DGKKZO74741900T10C21A8MM8000
閲覧日:2022年1月5日)


ブランドイメージに敏感な欧米のグローバルブランド企業で進んでいたサ
プライチェーンにおける人権侵害の排除の動きが日本企業にも広がってい
ます。記事ではブランドイメージに敏感なBtoCの大手日本企業の事例ばか
りですが、サプライチェーンはつながっていますので、こうした動きが広
がればBtoBの中小企業であっても対応せざるを得ないでしょう。


貴社サプライチェーンから人権侵害を排除していくには、以下の取組が有
効です。


1. サプライチェーンを可能な限り短くする
自社で管理できるのは直接の取引先が中心です。間に中間流通が入り、サ
プライチェーンが長くなればなる程、サプライヤの実態把握が困難となり、
管理が難しくなります。コスト・リスクマネジメント面からもサプライチェー
ンは可能な限り短くすべきです。


2. 人権尊重を取引の前提として取引基本契約に織り込む
人権尊重を取引の前提とし、それを取引基本契約に明記します。取引先の
人権侵害が発覚した場合には、取引を解消する権利を貴社が有する事も記
載するのが良いでしょう。


3. サプライヤ監査の実施
必要に応じてサプライヤ監査を実施します。本当に貴社サプライチェーン
から人権侵害を排除したいのであれば、二次三次等その先々のサプライヤ
の管理も含めて貴社のリソース・コスト負担で行う必要があります。サプ
ライヤは会社毎にそれぞれの考えもありますから、すべてのサプライヤが
サプライチェーンからの人権排除に協力的、そのコスト負担をするとは限
りません。ですので、貴社のリソース・コスト負担でこうした活動は行う
必要があります。監査ノウハウや海外サプライヤ対応等で監査リソースが
不足している場合には、サプライヤ監査機関を起用する手もあります。


2022.3.4

vol.63「価値の源泉は外部調達ではなく内製で」

 

【今週のトピックス】

 

外作(外部調達)か内作(内製)か。企業が何かを調達しようとする時に
最初に判断すべき事の一つです。今回はその答えの参考になるトヨタのケー
スをご紹介します。

「トヨタ自動車は2025年にも、次世代車の加速や安全制御機能などを一
括で動かす頭脳にあたる基本的な車載ソフトウエアを実用化する。(中略)

トヨタが開発を進めるのは『アリーン』と呼ぶ車載用の基盤ソフト。米マ
イクロソフトの『ウィンドウズ』や米アップルの『iOS』などの基本ソフ
ト(OS)の車版と言える。トヨタ子会社のウーブン・プラネット・ホール
ディングス(東京・中央)が主に開発を手掛ける。」
出所)出所)「トヨタ、独自の車載用基盤ソフト 外販も」『日本経済新
聞』2022年1月4日朝刊 1面


トヨタはソフトウエア会社ではありません。通常の外部調達(以後「調達」
と表記)の考え方「内作より価格競争力のある専業から調達する事でコス
ト低減」という考え方に則れば、マイクロソフト・アップル・グーグルと
いったIT企業、もしくは車載OSで先行する電気自動車メーカのテスラ等、
外部企業から車載OSを調達するという選択肢になる所でしょう。


そうした選択が為されなかったのは、トヨタが車載OSは今後の自動車の
価値源泉と考えているからと弊社では捉えています。事業開発を進める際
のチェックリストの一つに「その事業を自社がやる意義があるか」という
ものがあります。この項目の意味する所は、貴社が顧客に対して価値を提
供できる立場にあるか、提供する価値が無いのであれば、貴社がその事業
を手掛ける意義はなく、その価値を提供できる他社が担うべきというもの
です。


トヨタの今回の判断は車載OSを自社で開発できないのであれば、それはト
ヨタが自動車メーカではなく、単なる受託製造企業になると考えたのでしょ
う。


恐らく、今回の開発投資は先行している他社から車載OSを調達するよりも
数倍も費用や時間が掛かるものと考えられます。それでも、トヨタが自動
車メーカであり続けようとするならば、どんなに費用が上回ろうとも、車
載OSは調達ではなく内製の一択と弊社は考えます。


2022.2.25

vol.62「DXを阻害するのは社員の不安」

 

【今週のトピックス】

 

DXの阻害要因として社員の不安が挙げられています。NPO法人ITスキル
研究フォーラム(iSRF)が毎年実施している、ITエンジニアのスキルと
意識を調べる「全国スキル調査2021」と一般企業のDX推進担当者や事業
企画担当者などを対象とした「DX意識と行動調査2021」とのの調査結果
によりますと、自社でDXを推進していると回答した926人のうち「答えた
くない」を除いた680人を年代別に分析すると、20代後半~40代後半でDX
に不安を感じる人が6割近くに上りました。


926人が感じる不安の種類別で最多なのは「分からないことが増えて追い
付けなくなる」の21.8%。一方「慣れないことが増えて仕事で失敗しや
すくなる」など2位以下の項目も一定の回答があります。
出所)神田 武、高橋 範光、鈴木 重央、池田 拓史、山之下 拓仁、市川
拓実、木本 将徳、板谷 成祥、松尾 翔 ITスキル研究フォーラム「1000
人調査で判明、DXをむしばむ『不安』社長が知らない一般社員と管理職の
不安、DX推進を阻むその正体」『日経XTECH』、2022年1月26日
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01923/012100001/?P=3
閲覧日:2022年2月6日)


弊社はDXは不可避と考えます。これは調達購買業務も例外ではありません。
人が変化に不安を感じるのは当然ですが、漠然と不安を抱えていても何の
助けにもなりません。変化の方向性を見極める事で、その不安を払拭しま
しょう。


弊社では調達購買のDXは以下の3つの方向で進むと考えています。
1. 調達購買各業務でのITツールの利用
2. 調達先の要件にDX対応が求められる
3. 調達カテゴリーの変化


1. 調達・購買業務のDX化
支出分析/見積依頼・取得/契約交渉・締結/発注・検収/請求・買掛管理/
サプライヤ情報・パフォーマンス管理といった各業務でのITツールの利用
が進むと考えられます。コロナ禍の影響もあり、対面での打ち合わせが減
り、Web会議に置き換わるでしょう。工場査察もリモートで対応せざるを
得ない機会が増え、難度が上がると考えられます。これらはツールの話で
あり、不安がらずに、マニュアル等を読みながら使って頂き、慣れていく
しかないと考えます。


2.調達先の要件にDX対応が求められる
DX化はサプライチェーン全体でのDX化を迫っています。そのため、デジ
タル化への対応はサプライチェーンを構成する個々のサプライヤにも求め
られます。すべてのサプライヤをデジタルなサプライチェーンに組み込ま
なければなりませんので、貴社の調達方針によりますが、デジタルのコミュ
ニケーションに対応できないサプライヤは、どんなに他の評価項目に優れ
ていても外さざるを得なくなるかもしれません。


3.調達カテゴリーの変化
DX化は貴社が必要とする調達品にも変化を生じさせます。一つは事業のDX
化に伴う調達品の変化です。例えば、自動車や家電で言えば、制御ソフト
ウェアへの調達金額のシフトがあります。小売や飲食・宿泊等の店舗・施
設でもIT・デジタル化が進み、そうした機器・アプリケーションやそれら
の保守・修理への支出金額が増えています。もう一つの変化は、あらゆる
業務でDX化が進みますので、それを推進するための機器・アプリケーショ
ンの調達が求められる事になります。


上記の内、1.調達・購買業務のDX化は確かにツールへの対応が必要です
ので仕事のやり方が変わります。しかしながら、2,調達先の要件にDX対
応が求められる・3.調達カテゴリーの変化はこれまでの調達業務の進め方
が変わるものではありません。2は仕様の変更、3は担当サプライ市場の変
更にすぎません。そして調達購買のDX化のウェイトの多くは2と3とになり
ます。


この様に考えれば、調達購買業務のDX化はそれ程不安に思うものではない
と考えられるものではないでしょうか?新しい仕様や新しい調達カテゴリー
への対応は貴方が調達購買機能の価値を示す良い機会です。この様に調達
購買のDX化を前向きに捉えて、恐れずに進んで頂ければと存じます。


2022.2.18

vol.61「EVは48万円で製造可能」

 

【今週のトピックス】

 

名古屋大学の山本真義教授らが中国の自動車メーカの上汽通用五菱汽車の
格安電気自動車(EV)「宏光MINI EV」の最上位版(3万8800元、約69万
円)を分解調査し、そのコストを合計48万円と推定しています。


この低コストの理由は大きく二つで、一つはEVで常識とされる機構を省い
たこと、もう一つは搭載部品で既存品を徹底的に使い回していることとし
ています。


EVで常識とされる機構の省略の例としては回生ブレーキと水冷装置の省略
が挙げられています。回生ブレーキは減速時に車輪の回転力を電力に変換
し車載電池に戻すシステムでEVの航続距離を延ばすには不可欠ですが、宏
光MINI EVには搭載されていません。そのため、この車の航続距離は最上
位版でも170キロメートルと短めです。それでも、回生ブレーキを省くこ
とで電装品を簡素化でき、例えば直流電流を交流に変えるインバーターで
は一般に6万円ほどかかるコストを1万6000円程度に抑えています。


既存品を徹底的に使い回している例に減速機の基幹部品のベアリングがあ
ります。このベアリングは専用設計ではなく、中国製のカタログ品を使用が
しています。インバータや充電器など電装品には耐久性が高い車載仕様で
はなく家電用半導体が使用されています。当然、これらの電装品は故障し
やすくなりますが、モジュールごと交換する設計で修理の手間を少なくし
その弱点を補っています。


中国の地方都市・農村では公共交通機関はもちろんガソリンスタンドすら
未整備な地域が多く、そうした地域の住民は自宅で充電できるゴルフ場の
カートのような低速EVを足代わりに使っています。上汽通用五菱は宏光MINI
EVを「代歩車(足代わりの車)」と名付け、年間100万台ほど売れている
この低速EV市場をターゲットとしている様です。
参考)「中国EV、機能絞り50万円台」『日本経済新聞』、2021年12月21日、16面


開発購買によるコスト低減のケースです。ここから伺えるのは、コスト低
減には、これまでの常識に囚われずに真摯に市場と向き合い、市場が求め
ていない機能・仕様は大胆に削ぎ落す、原材料・部品に標準品を使うといっ
た二点が有効ということです。何れもコスト低減の常套手段です。コスト
低減に奇策はなく、基本の徹底が重要と考えます。


2022.2.4

vol.60「VAIO/グローバルに個人向けPCの設計を共通化」

 

【今週のトピックス】

 

2014年にソニーから独立したパソコン(PC)メーカーのVAIOは2023年を
めどに世界で展開する個人向けPCの設計を共通化します。「VAIOは現在、
23カ国・地域でPCを販売している。開発する個人向けPCは、地域によっ
てPCの重さや端子の数が異なる。地域の特性に応じたPCを販売できるが、
部品調達に手間がかかったりブランドの統一感を出しづらかったりすると
いう課題があった。

 

設計を共通化すれば、一度に大量の部品を調達でき、コスト削減につなが
るほか、世界でブランドの統一感も出せる。共通化に向けて開発投資を始
めた。」
出所)「個人向けPC設計共通化へ」『日本経済新聞』、2022年1月14日
朝刊12面


グローバルソーシングを進めて行く上で当然の帰結と考えます。異なる原
材料・部品をまとめて調達するカテゴリーソーシングでもある程度の効果
は出せますが、設計を共通化する事で分散していた一品当たりの生産数量
が飛躍的に上がりますので開発・設計・生産の効率化・コスト低減につな
がります。


マーケティング上、地域の特性に応じた製品を開発する必要もあるかと思
いますが、ビジネスモデルに応じて、そうした需要には
1. その製品のターゲット需要ではないとして対応しない
2. 製品を幾つかのモジュールに分け、それらの組み合わせで対応するマ
スカスタマイザーションで対応
する事で、設計のグローバル共通化を進めて行くべきと弊社では考えます。


設計のグローバル共通化を進めて行くにあたりご留意頂きたいのは、ここ
で共通化すべきは仕様の共通化迄で決して品目・サプライヤの共通化では
無いという事です。なぜなら、商慣行や工場からの距離等により必ずしも
グローバルベストな品目・サプライヤがローカルベストとは限らないから
です。弊社ではトータルコストを最小化するグローバルサプライヤとロー
カルサプライヤとのMixが何れのカテゴリーでも最適と考えます。


世界各国の経済成長により世界的に中間層の市場が形成されつつあり、
iphoneやアパレルのZARAの様にグローバルにヒットする製品が登場して
います。そうした中で、グローバルに設計を標準化していく手法は今後ま
すます進んでいくと弊社では考えます。

 

2022.1.28

vol.59「欧州委がアップルLightning経済圏解体にメス」

 

【今週のトピックス】

 

「欧州委員会は2021年9月23日(現地時間)、電子機器の充電ポート(端
子、コネクター)をUSBの「Type-C(USB-C)」コネクターに統一する無
線機器指令(「Radio Equipment Directive」)の改正案を発表した。
欧州議会や欧州理事会の立法手続きを経て採択されれば、採択日から24カ
月の移行期間内に充電ポートをType-Cにする必要がある。(中略)


この改正案の影響を大きく受けるのが、「Lightning」コネクターを採用
している米Apple(アップル)のスマートフォン「iPhone」だ。(中略)


欧州委員会がType-Cへの統一を図るのは、充電器や充電ケーブルの無駄
を省き、環境負荷低減を図るためである。廃棄された未使用の充電器は毎
年1万1000t(トン)になると推定されるという。加えて、消費者の利便性
の低下やコスト増大を抑制する狙いがある。」
出所)根津 禎「iPhoneに逆風、充電口を『USB Type-C』に統一 欧州委
が法案」『シリコンバレーNextレポート 日経クロステック』2021年9月28日、
電子版(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00141/092700137/
閲覧日:2021年12月19日)


要求元サイドが差別化のためと称して原材料・部品の独自仕様に拘るのに
対し、調達購買サイドはコスト低減のため標準化を図るという構図と同じ
ケースです。


記事ではアップルが独自仕様のLightningに拘るのは、第三者がiphone
の周辺機器を販売するには、周辺機器の相互接続性を担保するという名目
で同社の認証プログラムに加入する必要があり、アップルは周辺機器メー
カからライセンス料などの収入を得るという「Lightning経済圏」を構築
している事が一つの要因と指摘しています。


オープンな規格でデファクトスタンダードを獲るか、独自規格で囲い込む
かは規格戦略の分かれ目でありますが、協力者の多いオープンな規格戦略
の方に一日の長がある様に考えられます。iphoneの様な非常に強力な商品
が無い限り、独自規格で一定規模の経済圏を作る事は難しいでしょう。


近年は圧倒的な経済圏を構築するプラットフォーマービジネスへの行政の
目が厳しくなっており、折角、苦労して経済圏を構築しても、この様に行
政から規制が掛けられ、それを解体させられるリスクも出てきています。
ユーザへの価値の無い方法でユーザを囲い込む方法は非公正な取引手法と
見なされる様になっていると言えます。


調達購買担当の立場としては、差別化のためとして要求元がユーザの利益
につながらない安易な独自仕様を示してきた時には、
1. コスト上昇要因
2. 製品普及の阻害要因となる可能性
3. 例え成功したとしても、非公正な取引手法として活用できなくなるリ
スク
を指摘、できる限り標準的なモノの組み合わせでユーザへの価値提供・差
別化を図る様に誘導すべきと考えます。


2022.1.21

vol.58「コストは市場で、価格は意志で」

 

【今週のトピックス】

 

「世界の株式市場で企業の「値上げ力」に注目した選別が進んでいる。原
料費や人件費などのコストの上昇を、製品やサービスに転嫁し競合に比べ
高い利益率を保てる企業への評価が高い。物価高は企業全体では利益の圧
迫要因となりかねず、投資家はインフレへの対応で企業の実力を見極めよ
うとしている。


『メニュー値上げが大きく寄与した』。米外食チェーンのチポトレ・メキ
シカン・グリルが7月20日、市場予想を上回る2021年4~6月期決算を発表
すると、翌21日の株価は12%高と急騰した。人件費の上昇を受けて6月に
メニュー価格を平均4%引き上げた。


その後も株価は堅調で、9月13日時点で6月末に比べ20%上昇している。同
期間の米S&P500種株価指数の上昇率(4%)を16ポイント上回る。


米マイクロソフトが8月19日に業務ソフトの『オフィス365(現マイクロ
ソフト365)』の法人価格を引き上げると発表すると、翌20日に株価は3%
上昇した。法人は個人に比べ値上げを受け入れやすく、業績の拡大につな
がると好感された。」
出所)「投資家『値上げ力』見極め」『日本経済新聞』、2021年9月15日、
https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20210915&ng=DGKKZO75754000U1A910C2ENG000 閲覧日:2021年12月10日)


コストは市場で決まりますが、価格は意志で決まります。なぜなら、
価格=コスト+利益ですので、価格にはコストにマージンが加わっている
からです。BtoCの場合、マージンは売り手のこの取引で幾らの利益を上げ
るという意志で決まると言えるでしょう。


その意思を貫くには乗せた利益の分を上回る価値を買い手に認めてもらう
必要がありますが、BtoCでは商品や販売方法に様々な工夫をこらす事によ
り、その意思を通す余地が非常に大きいので、BtoCの場合は売り手の意志
で価格が決まると言えるでしょう。


今回のケースの様に株式市場で値上する力のある企業の評価が高まる事は
容易に推測されます。それは値上げにより単純に利益率が改善するからと
いう事ではありません。値上げにはそれを買い手が受け入れず離反してし
まい、売上・利益減少につながるリスクがあります。顧客が値上げを受け
入れるという事は、その企業が買い手により高い価値を認めさせる商品を
生み出す力や販売力があるという事を示しているからです。


BtoBの場合には、マージンは、売り手のこの取引で幾らの利益を上げると
いう意志と、買い手のいかにコストに近い形で調達するかという意志との
ぶつかり合いで決まります。米マイクロソフトがマイクロソフト365の法
人価格を引き上げに成功できたのは、代替の利かない製品サービスを提供
する事で市場競争から抜け出す事に成功したからと言えるでしょう。売り
手の意思が買い手の意思を上回ったケースです。


我々、買い手企業としては、こうした売り手の意志に屈せぬ様、いかに汎
用製品・サービスで自社の製品・サービスを組み上げ、あらゆる支出にお
いて可能な限り調達市場を形成する事に腐心する必要があります。


2022.1.14

vol.57「パッケージの小型化の価値向上」

 

【今週のトピックス】

 

「家電製品のパッケージが小型化している。任天堂は10月に発売した「ニ
ンテンドースイッチ」の新型機の外箱の容量を2割削減。ソニーグループ
はワイヤレスイヤホンの包装の大きさを3分の1にした。(中略)


家電製品はこれまで高級感を演出するため大きなパッケージを採用する傾
向があった。(中略)海外では米アップルが20年に発売した『iPhone12』
から外箱の容量を従来の半分程度にしている。消費者の価値観も変化し、
小さいパッケージは無駄がないと好意的に見られるようになってきた。」
出所)「新型スイッチ、外箱小さく」『日本経済新聞』、2021年11月11日19面


貨物輸送の運賃は、ばら積みの場合、一般的に実重量と容積を重量に換算
した容積重量とを比較し、より重い方によって規定されるケースが多々あ
ります。ですので、パッケージの小型化は容積重量が勝る軽量品において
は従来からある物流費低減の手法です。また、小さいパッケージの方が包
装の材料の使用量や在庫の保管スペースが少なくなり、包装材料費や保管
費を抑制する事ができます。


しかしながら、過去においてはアップルの様に製品の高級感を出すために
敢えて大きめのパッケージを採用するケースがありました。消費者がそれ
を評価し、パッケージの小型化で物流・保管費や包装材料費を低減するよ
りも、大型のパッケージで消費者に訴求し売上を伸ばした方が企業はより
大きな利益を得る事ができました。


そんな時代も変わりつつある様です。消費者の間で環境負荷が意識される
様になり、パッケージの大きさで見栄えを良くするよりも、無駄のない包
装で環境負荷低減を真摯に考慮している事を訴えた方が消費者に支持され
る時代になっている様です。


こうした環境負荷低減の意識は先進国に限った事ではありません。むしろ
ASEAN諸国のそれは先進国を上回っています。株式会社電通が日・独・英
・米・中国・インド・インドネシア・マレーシア・フィリピン・シンガポー
ル・タイ・ベトナムの12か国を対象に行った「サステナブル・ライフスタ
イル意識調査2021」によりますと、エコバック使用率では上位はフィリピ
ン(87.3%)・日本(78.8%)・中国(73.8%)の順で、下位は下から米国(28.2%)・
英国(43.8%)・シンガポール(50,7%)となっています。詰め替え商品を買
うの上位はフィリピン(74.3%)・インドネシア(73.7%)・日本(67.8%)、
下位は中国(32.4%)・英国(36.0%)・米国(43.6%)となります。水筒(マ
イボトル)を持ち歩くの上位はインドネシア(72.3%)・フィリピン(72.3%)・
マレーシア(72.0%)、下位は日本(46.4%)・米国(53.0%)・英国(43.6%)
となります。


また、昔は大きいもの・豪華なものが好きな国民性のため日本の小型乗用
車・軽自動車が売れなかった中国で、電気自動車では小型車の宏光Mini
EVがテスラを上回る販売台数を誇っています。こちらは小型である事が評
価されたというよりは、EVで圧倒的な低価格である事が好調の理由と考え
られますが、少なくともこれまでは見栄えが非常に重視された自動車市場
に費用対効果を重視する市場を創り出したと言えるでしょう。


この様にコンパクトな包装を支持する市場はグローバルに広がっています。
貴方も包装仕様をコンパクトにする余地がある案件を担当した際には、こ
うした事例を使って、包装仕様の改善を提案してはいかがでしょう。その
提案はコスト低減のみならず、売上ならびに企業イメージの向上にもつな
がると考えられます。


2022.1.7

vol.56「調達は自由への闘争」

 

【今週のトピックス】

 

「日産自動車は世界的な半導体不足に対応するため、車の設計の一部を見
直し始めた。ブレーキなどに組み込む特注の半導体を産業機械向けのよう
な一般製品で代用できるようにする。」
出所)「日産、汎用半導体で代替」『日本経済新聞』、2021年11月18日、
1面


カテゴリー毎の調達戦略は大別すると「統合」と「自由」との二つに分類
されます。「統合」の調達戦略を採るにはサプライヤを凌駕するマネジメ
ント能力とそれを支える人材が必要となりますので、多くの場面で「自由」
を求める調達戦略が採用されます。


「自由」の調達戦略はサプライヤに貴社の行動が縛られない様に備えるも
のです。例えば、敢えて一部の取引を二番手サプライヤに付与し、メイン
サプライヤにトラブルがあった時に、二番手サプライヤに取引移管できる
様にしておくシェア割は、自由を求める調達戦略の一つと言えます。


今回の日産の取組では、昨今の半導体不足に対応するため、設計を見直し
ブレーキなどに組み込む特注の半導体を産業機械向けのような一般製品で
代用できるようにするものです。


一社のサプライヤしかできないものを採用してしまうと、どんなに貴社が
大口顧客であろうが圧倒的にサプライヤ優位となってしまいます。サプラ
イヤの意向で貴社のサプライチェーンが左右されてしまい、供給トラブル
が生じた時などは、ただサプライヤに供給してもらえる様、懇願するしか
できません。


調達購買業務は基本は要求元が求めるものを調達します。しかしながら、
貴社のサプライチェーンマネジメントの自由を奪う様な要求が要求元から
出された場合、その供給リスクを説明し、要件変更を求めて闘う事も調達
購買部門の仕事と弊社は考えます。さもなければ、どんなに頑張っても貴
社に利益が上がらず、儲かるのはサプライヤばかり、サプライヤのために
貴社は仕事をしているといった事態に陥りかねません。


2021.12.24

vol.55「行政手続きでさえ2025年までに98%超のオンライン化」

 

【今週のトピックス】

 

政府の規制改革推進会議は21年6月に出した答申で2万2千ほどある行政手
続きの98%超を2025年までにオンライン化する目標を掲げました。
出所)「行政手続き、25年までに98%オンライン化」『日本経済新聞』、
2021年6月1日、電子版(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA31CH90R30C21A5000000/
閲覧日:2021年11月3日)


前例主義、変化を嫌う行政で98%の手続きのオンライン化が果たして本当
に達成できるかは甚だ疑問が残りますが、野心的な目標で、是非この方向
で進む事を望みます。


翻って、調達購買業務のDXは進んでいるでしょうか?筆者の肌感覚では、
各社こぞって調達購買業務のDXに向けて進んでいる様には感じられません。
理由の一つはDXには企業のビジネスモデル・戦略・すべてのオペレーショ
ンの変革が求められ、DXの優先順位が他業務にある、ないしはどこから手
をつけて良いか分からない状態に各社が置かれている事にあると考えられ
ます。


全社の変革において優先されるべきは売上に直結する開発・マーケティン
グ・営業になり、まずはこれらの業務のDXの目処がつかない事には、なか
なか調達購買業務のDXに経営者の目が向かないものと考えられます。


調達購買業務のDXが現在それほど取沙汰されないもう一つの理由は、元々
DXが巷で言われる前の2000年頃より調達購買業務のデジタル化は求められ
ており、先進企業は調達購買業務のデジタル化を既に済ませており、今に
なってDXに対応する必要が無い事にあるのではないでしょうか。


調達購買業務のパフォーマンスはそのDXの進展度合に直接的に大きく左右
されます。コスト低減機会の発掘の支出分析や適切な支出管理には、支出
明細やサプライヤデータを分析可能な形で一元管理する必要があります。
契約管理・調達購買管理・サプライヤ管理を効果・効率的に行うには電子
プラットフォームが不可欠です。調達購買業務の先進企業は成果を上げる
事を目的に20年程前からDXに取り組んでおり、今更DXという言葉に煽られ
る必要はないのではないでしょうか。


調達材や材カテゴリー毎の調達戦略は貴社のビジネスモデルや事業戦略に
応じて変化しますが、調達購買業務プロセス・インフラはその影響を受け
ません。もし、貴社の調達購買業務プロセス・インフラのDXが進んでい
ないのであれば、まずはこちらにフォーカスして進められる事をお勧めし
ます。


2021.12.17

vol.54「交渉に必要なものはBATNAと覚悟」

 

【今週のトピックス】

 

日本製鉄が中国の鉄鋼メーカーの宝山鋼鉄とトヨタ自動車とを無方向性電
磁鋼板の同社特許権の侵害で提訴しました。日本企業が大口顧客を訴える
という事は非常に少なく、本件は驚きを以って迎えられました。


但し、日鉄はいきなり両社を提訴した訳ではなく、宝鋼ならびにトヨタと
同社の特許侵害について協議して来た上で満足な結果が得られなかったた
め、提訴に踏み切っています。


このケースから学べるのは、交渉に臨むにあたって必要なものは相手と貴
方のBATNAの理解と交渉決裂した場合の覚悟という事です。BATNAはBest
Alternative to a Negotiated Agreementの略で、交渉を決裂させるし
かないと判断する限界線と交渉決裂時の次善策を指します。


日鉄のBATNAは例えトヨタとの関係が悪化する事になっても、提訴により
トヨタのみならず他ユーザでの宝山鋼鉄の無方向性電磁鋼板の使用停止に
あると考えられます。


無方向性電磁鋼板は特殊な製造プロセスによって鉄の磁石につく特性(磁
気特性)を著しく高めた高機能鋼板を、特定の方向に偏った磁気特性を示
さないように鋼板の面内でできるだけランダムに結晶方位をコントロール
したもので、モータなど回転機の鉄心に広く使用され、自動車の電動化に
必要不可欠なものです。
参考)「当社無方向性電磁鋼板特許に関する訴訟の提起について」日本製
鉄株式会社 2021 年10月14日


これまでは技術的難易度が高く、日鉄が市場を抑えていましたが、韓国・
中国の製鉄メーカが日鉄より低価格で参入、20年にトヨタが宝山鋼鉄品を
採用する等、技術・品質による参入障壁が無くなっています。ですので、
日鉄はこのまま宝山・トヨタと協議による解決を続けた場合、時間だけが
経過し、トヨタならびに他ユーザは宝山製品の使用・拡大が続き、提訴に
よる宝山の無方向性電磁鋼板のトヨタのみならず他ユーザでの使用停止と
いう同社のBATNAすら達成されないと判断したのでしょう。


敗訴しては意味がないので、日鉄が提訴したのには宝山が日鉄の特許侵害
を犯しているという確たる証拠を握っていると考えられます。それであれ
ば、判決を待って敗訴という最悪の結果を避けるべくトヨタは和解に動き、
宝山品の使用を止めるか、宝山を通じて日鉄への特許使用料を払い、日鉄
は自社品を販売したのと同等の利益を得られるでしょう。また、提訴した
段階で宝山品は知財トラブルを抱えている事が明らかになり、他ユーザへ
の宝山品の使用・採用の抑止にもつながります。


一方で、トヨタは日鉄のBATNAは自社との大口取引を打ち切る事はできず、
しぶしぶ取引を続けるものと考え、提訴に踏み切るというこの日鉄のBATNA
を見落としていたのではないでしょうか?トヨタの本件についてのプレス
リリースによると「本件につきましては、日本製鉄より当該の指摘を受け
たことから、改めて宝山鋼鉄に確認をさせて頂きましたが、先方からは
『特許侵害の問題はない』という見解を頂いております。」と特許侵害を
指摘されている当事者からの確認に留め、「長年に渡り、日本の自動車産
業、また弊社のクルマづくりを支えて頂き、また弊社の大切な取引先であ
ります日本製鉄が、ユーザーである弊社に対し、このような訴訟を決断さ
れたことは、改めて大変残念に思います。」と情に訴えているのとも、恫
喝ともどちらとも取れる根拠の無い反論で結んでいるのは、サプライヤが
顧客を訴える事はないと高を括っていたのではないかと考えられます。
出所)「日本製鉄株式会社による弊社への電磁鋼板に関する訴訟について」
トヨタ自動車株式会社 2021年10月14日 


交渉が決裂した時には、相手方は相手方のBATNAに則った行動をし、貴方
のBATNAはそれを前提としたものとなります。例えば、サプライヤが値上
げを申し入れてきた時に、そのサプライヤの提示した値上げが通らなかっ
た時にはBATNAが1.貴社への供給停止なのか、2.提示額より少ない%での
値上げ受入なのか、1.の場合、貴社のBATNAに提示の値上後の価格より価
格競争力のある代替サプライヤが確保できているのか、ないしはそのサプ
ライヤからの供給が止まってもしのげるといったものが無ければ、貴社の
BATNAは満額での値上受入となります。


この様に交渉に臨むにあたっては、相手と貴方のBATNAを理解し交渉決裂
した場合に貴方のBATNAを受け入れる不退転の覚悟があれば、交渉決裂を
恐れて、貴方のBATNAより悪い条件で交渉をまとめてしまうという事が避
けられます。


2021.12.10

vol.52「サプライヤのスペックインを防げ」

 

【今週のトピックス】

 

地方自治体が発注するウェブサイトのコンテンツ管理システム(CMS)を
巡り、公正取引委員会はスマートバリューとその営業協業先2社に独占禁
止法違反(不公正な取引方法)の疑いで立ち入り検査しました。これら2
社には、複数の地方自治体に対し、CMSの入札仕様書に「オープンソース
のソフトウエアを使っていないCMSであること」を要件に盛り込むよう働
きかけ、競合他社の参入を妨げた疑いが掛けられています。

CMSは誰でも利用可能なオープンソースのソフトウエアを使って開発する
ベンダーが多くありますが、スマートバリューはオープンソフトウェアを
使わずに自前でCMSを開発しているといいます。オープンソースのソフト
ウエアを禁じたのはセキュリティ対策が名目とされていますが、実際には
オープンソースを使う競合他社を排除する目的だった可能性があるとの事
です。
参考)「参入妨害疑い 2社立ち入り」『日本経済新聞』、2021年11月3日41面


スマートバリュー社の行為はスペックインという営業手法です。スペック
インとは、設計の段階で自社の商品・工法等を採用してもらうべく、自社
にしか無い仕様を設計・要件に織り込む事を図るものです。


スペックインすべてが独禁法に抵触する訳ではなく、不当なスペックイン
が独禁法上は問題となります。今回のケースは、オープンソースソフトウェ
アの排除がセキュリティ対策として適切とは言えない事が問題となってい
ると考えられます。


しかしながら、スペックイン営業は第三者の目に触れない商談の中で行わ
れているので、それが例え不当なものであってもなかなか明るみになる事
はなく、貴社が独禁法によって守られていると考えるのはちょっと安直と
言わざるを得ません。また、調達購買の観点からは、スペックインは元々
競合他社との競争を妨げるべく、そのサプライヤにしかない特殊・過剰仕
様を織り込もうとするものなので、すべてが貴社に不利に働くものと捉え
ておくべきです。


スペックインを防ぐには技術・設計知識が不可欠なので、担当材が技術バッ
クグラウンドの無い場合にはハードルが高くなりますが、調達購買担当者
としては、それでもその職責を全うする必要があります。その様な場合で
も、以下のテクニックを使う事でスペックインを防ぐ事が可能です。


■すべての仕様・要件の妥当性を疑う
すべての仕様・要件について、何故、その仕様・要件となっているかユー
ザの視点で考えてみましょう。その中で、過剰・特殊仕様と思われるもの、
サプライヤの数を大きく限定するものについては、依頼者にそれが本当に
必要なものなのか、どうしてその仕様・要件が必要かを確認しましょう。
依頼者がそれを説明できない場合、スペックイン営業に絡めとられており、
そのサプライヤの受け売りで指定しているだけで、仕様・要件の妥当性が
なく見直す必要があります。


■サプライヤの力を借りる
技術力・設計能力の高いサプライヤの場合、常識的でない仕様・要件につ
いて指摘してくれる時もあります。その様な指摘があった時には、妥当な
仕様・要件をそのサプライヤに確認し、依頼者に対してそれらの見直しが
可能か、不可能な場合、サプライヤの技術者も交えてその理由を検討しま
す。メーカ指定の場合、敢えて競合メーカの製品について同等品が無いか
を確認し、依頼者に競合メーカの同等品がなぜ不採用なのか理由を聞きま
す。上記の仕様・要件の妥当性の確認とこのサプライヤとのコミュニケー
ションにより、やがてはサプライヤに話を聞かなくとも、依頼者との仕様
・要件の調整に必要な技術・設計知識が身につく様になります。


■開発購買を進める
開発購買とは、設計に入る前の検討初期段階から仕様・要件整理に調達購
買の視点を織り込む事です。調達購買版のスペックインです。スペックイ
ン営業に対し、開発購買で対抗します。上記の二項目をできるだけ早い段
階で実施していきます。特に、自社に設計ノウハウが無く、サプライヤの
支援が必要な案件では開発購買を進めるべきです。その様な案件では設計
が懇意にしているサプライヤ一社に決め打ちで相談しスペックインされて
しまいがちですので、その様な案件でこそ、広くサプライヤから情報を集
め、適切な仕様・要件を設定すべきです。


2021.11.26

©2021 Samurai Sourcing, Inc.  All rights reserved.