【週刊 戦略調達 vol.117 2011.8.9】
東日本大震災が明らかにした日本企業の食わず嫌い

【今週のトピックス】

経済産業省が、4月に公表した「東日本大震災後の産業実態緊急調査」に
続き、震災から3ヶ月後の被災拠点の生産水準、部品・部材の調達状況な
どについての「東日本大震災後の産業実態緊急調査2」の結果をこの度公
表した。

それによると、

被災した拠点、被災していない拠点のいずれも8割超が震災前の生産水準
に戻っている又は震災前よりも上回る生産水準になっている。

震災前の水準を下回ると回答した拠点の内、被災した拠点の7割超、被災
していない拠点の9割が2011年内に震災前の生産水準に回復する。

97%の製造業で既に代替調達先から調達を始めている。4月調査時点では、
素材業種で12%、加工業種では48%が代替調達先がないと回答していた
が、今回の調査では、それぞれ0%、18%に減少。

製造業全体の83%が、従来の国内調達先が復旧後に元の調達先に戻すと
回答。一方、従来の調達先が復旧後も、現在の国内代替調達先から調達
するとの回答が製造業全体で58%、現在の海外代替調達先から調達する
との回答が同42%となった(複数回答のため合計は100%を超える。材
毎に対応が異なると考えれる。)

今回の調査は2011年6月14日~7月1日に掛けて実施され、対象企業は123社
(製造業65社、小売・サービス業58社)。

このようにしてみると、東日本大震災は、日本企業がこれまでのサプライ
チェーンマネジメントであまり意識していなかった「柔らかいサプライチェー
ンづくり」という課題を明らかにし、そして、その実現を半ば強制的に実
施さえたと言える。

柔らかいサプライチェーンというのは、グローバル競争に勝ち抜くことと、
リスクマネジメントやクライシスマネジメントの両立を目指し、弊社が提
唱しているサプライチェーンのあり方で、リーンなサプライチェーンを追
求しつつ、有事の際には速やかに対処できるような態勢を整えておくこと
を指す。

そのためには、必要な時には調達品、サプライヤを自由に組み替えられる
ようにしておくことも実現すべきことの一つに含まれるが、日本では、単
なるイメージで、サプライヤとの長期的なパートナーシップがあらゆる取
引において競争力の源泉となると盲信されている。その結果、必要に迫ら
れても、代替のサプライヤを評価したり、代替品に切り替えて生産するた
めのノウハウが失われつつあった。

サプライヤを切り替えることは品質不良や納期遅れなど生産上のトラブル
につながったり、海外のサプライヤは安かろう悪かろうで評価に値しない
というイメージが先行し、新規サプライヤを積極的に採用するという努力
はあまりなされて来なかった。

東日本大震災は、こうした硬直化していたサプライチェーンに対して、既
存取引先の供給停止という強制的な手段を以って、否が応でも代替品、代
替サプライヤを見つけ出さなければならない状況を買い手企業にもたらし
た。

このような状況に追い込まれて、初めて、調達先を見直したり、海外調達
を行うことになった企業もあることだろう。そうした状況が今回の調査の
「製造業全体で、従来の調達先が復旧後も58%が現在の国内代替調達先か
ら、42%が現在の海外代替調達先から調達する」という回答から伺える。
これらのケースでは「今回使ってみたら、こちらの方が良かった」という
ことだ。

既存品、既存取引先よりも良い代替品、取引先があるのかは、積極的に調
達活動を行わなければ分からない。そして、そうした代替品、新規サプラ
イヤを評価、採用していくには、それらについての仕様、品質、信頼性の
管理ならびに情報収集、評価能力、態勢が必要である。

それには人員や情報インフラへの投資が不可欠だ。東日本大震災で明らか
になった通り、そうした投資は、平時における競争力のある調達・購買品
の確保のみならず、事故や災害など非常時における対応能力を高めること
にもつながる。

東日本大震災を教訓に、より多くの企業が、リーンかつ柔らかいサプライ
チェーンづくりの方向に舵を切ることを望む。それが日本の企業、産業の
復興、今後の発展につながる。


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【編集後記】

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

最近になり、少しずつ東日本大震災の影響についての統計数字が出てく
るようになりましたが、それらを見る限り、各担当者の努力による代替品、
代替調達先の確保などの相当な努力に支えられてのものですが、サプライ
チェーンが複雑な自動車産業などを除き、マスコミが喧伝する程サプライ
チェーン寸断は起きていなかったと考えられます。

今回の経産省の調査でも、素材業種で生産水準が減少した要因は国内需要
の減少と明記しており、サプライチェーン寸断による原料・部材不足では
ありませんでした。鉱工業生産指数の生産、在庫、出荷の動きを見ても、
自動車および関連産業を除き、在庫は減少せず、反対に積みあがった業種
も多々ありました。東日本大震災では、生産の落ち込みより、需要の落ち
込みの影響の方が大きかったといえます。

その一つに自動車メーカの生産停止の影響もあるかもしれませんが、分か
らないのは、果たして自動車メーカ各社が生産を無事続けられたとして、
従来通り車が売れたかという点です。こればかりは推測の世界になってし
まうので何ともいえません。

ここから導き出させる教訓は、日本の産業構造があまりにも自動車産業頼
みになっているという点です。サプライヤの経営者の立場に立った時に、
一つの市場に頼り切るのは、その市場の販売動向の影響を直接受けてしま
うので、あまり好ましいものではありません。(山本)

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【週刊 戦略調達】
■発行者 株式会社 戦略調達 中ノ森 清訓
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■発行日 毎週火曜日
■創刊 2009/4/16
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