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【環境調達.com 第66号 2010.9.30】
カーボンフットプリントでサプライチェーンを固定化する愚にNoを!

【環境調達.com 新着トピックス】

2010年7月にメキシコ・レオンで開かれた国際標準化機構環境専門委員会
(ISO TC 207)でカーボンフットプリントが焦点の1つに浮かび上がった。
ISO TC 207は環境マネジメントシステム規格ISO14001を発行している団体。
ここでCO2など温室効果ガス(GHG)排出量の算定に関する「スコープ3」
という新しい規格が議論されている。

両組織が策定する規格は、任意団体などが発行するプライベート標準だが、
企業内活動における燃料の燃焼で排出される温室効果ガス排出量の測定に
関する「スコープ1」と電力など2次エネルギーの使用によって間接的に排
出する温室効果ガス排出量の測定に関する「スコープ2」で実績があり、
世界に与える影響は無視できない。これらの2つ温室効果ガスの排出量に
ついては、企業は定期的に報告しなければならなくなっている。

現在、スコープ3として算定方法の規格化が検討されている温暖化ガスは、
対象や範囲が次のように大幅に拡張されている。

(a)調達品に関する1次取引先から最上流のサプライヤに至る全排出量
(b)固定資産に関わる排出量
(c)輸送(搬入側と搬出側の両方)に関する排出量
(d)出張旅行、従業員の通勤に関連する排出量
(e)廃棄物に関連する排出量
(f)フランチャイズ店の排出量
(g)リース品の排出量
(h)投資に関する排出量
(i)顧客による製品の使用に関する排出量
(j)顧客の使用済み段階での製品に関する排出量
(参考:2010年9月24日 ECO JAPAN「世界環境標準化戦争 企業の環境対
応に迫る"スコープ3"の脅威」市川芳明)

スコープ3は企業についての集計値だが、測定の仕方にもよるが、これら
を測定するには結局あらゆる製品・サービス、事業活動におけるカーボン
フットプリントの導入が不可欠である。カーボンフットプリントは製品・
サービスのライフサイクル全体における温室効果ガス排出量を測定・表示
するという概念。

(a)から(j)の内容を良く見てほしい。企業レベルでこれらを集計すれば良
いといっても、何れの活動にも、多くの外部企業からの製品・サービスが
多く関わっている。しかも、その関与の仕方は様々で、単純に取引先企業
の合計では非常に課題な数字になってしまう。製品・サービス、活動の標
準値を用いては、個々の企業の環境負荷低減努力が反映されておらず、測
定が環境負荷低減のインセンティブにならず、測定する意味がない。そう
なると、資源、素材のサプライチェーンの源流にまで遡ってあらゆる製品・
サービス、事業活動単位で温室効果ガス排出量を把握する必要がある。

ISOでは温室効果ガスマネジメント分科委員会(TC207のSC7)において、
製品のカーボンフットプリント規格ISO14067と企業のカーボンフットプリ
ント規格ISO14069の策定が進められている。別の温暖化ガス算定基準組織
であるGHGプロトコルイニシアティブは、スコープ3だけではなく、製品の
カーボンフットプリントに相当する「製品のライフサイクル会計報告
(Product Life Cycle Accounting and Reporting Standard)」に関する
規格も同時並行で策定を進めており、年内にも完成予定という。
(参考:同上)

これらは、一体、誰の何のための規格だろう。そもそも温室効果ガスと地
球温暖化の関係は未だに科学的論争が終結していない。また、温室効果ガ
スの測定は、現時点では、最終顧客からあまり価値を認めてもらえず、価
値を生まない活動といえる。幾ら監査法人、審査・認証機関、コンサルティ
ング会社が高い審査料、認証料を取ろうとも、サプライチェーン上では何
の価値も生んでいない。これでは、スコープ3であろうと、カーボンフッ
トプリントであろうと、単に監査法人、関連審査・認証機関、コンサルタ
ントを儲けさせるためだけのものだ。

スコープ3を議論するISO 14067作業部会の参加者は、監査法人やコンサル
タント、NGOなどが圧倒的に多く、事業会社からの参加が少ない。GHGプロ
トコルイニシアティブの幹事メンバーも企業を代表する委員が1名だけで、
残りの14名はそれ以外の所から委員が出ている。(参考:同上)仮にこう
した場に事業会社からの参加が増えたとしても、かなり上のクラスからの
参加になると予想され、結局、現場の測定の苦労などあまり分からないま
ま議論が進められることになるだろう。だから、何の価値も生まない非現
実な活動に膨大なコストをかけるような規制がまかり通ってしまう。

こうした動きにより懸念されるのが、サプライチェーンの固定化による非
効率化、非活性化、イノベーションの阻害だ。測定の苦労、コストを考え
ると、取引先どころか、原料一つ、ねじひとつ変えられないということに
なりかねない。これでは、イノベーションの採用どころか、既存製品の改
良すらままならない。

客先認定と呼ばれる慣行がこうした動きを加速させる。客先認定とは、買
い手企業の品質管理上、サプライヤが設備、材料・部品やそれらのサプラ
イヤ、作業方法などの変更をする時には、買い手企業の承認を得るという
もの。客先認定が取れなければ、幾ら改善効果が見込まれようとも、サプ
ライヤは変更ができない。当然、何も変えなければ、何の改善も行えない。
それで売価を下げろというのは単に「利益を削れ」「赤字でも仕事をしろ」
と言っているのであって、無理な要求だ。

それでも、納入品による客先での品質トラブルを恐れる営業、製造、調達、
設計、品質管理のどの現場でも、「客先認定が取れない」と述べることが
何もしないことの免罪符となる。何もしなければ、マネジメントの必要も
ない。粛々と日々のオペレーションを繰り返せばよい。しかし、その先に
待っているのは、衰退だけ。

カーボンフットプリントはこうした動きを加速させる。ある部品を変える
ことによって、カーボンフットプリントがどう変わるのか、改善を行うと
するものは、そこで用いられるすべての材料にまで遡ってそれを試算し直
さなければならない。検討の過程では、様々な候補を挙げなければ、良い
案が生まれない。それらについて、すべて同じ作業を繰り返さなければな
らない。そこまでして、何かを変えようというインセンティブを現場の人
間は保てるだろうか。

もう一つの懸念は、中小企業、ベンチャーにとっての事業継続のハードル
がますます高くなるということだ。改善うんぬんの前に、単に何かを売ろ
うとするだけで、こうした計測、認証コストの負担に耐えられなければな
らない。ただでさえ、どこの業界でもメジャー化、スケールの追及が進む
中で、中小企業の存続や新規参入が起こりにくくなる。競争や新規参入が
なければ、工夫しようというインセンティブが生じず、イノベーションは
起こらない。

国際規格を議論するような優秀な人達は、自分達の能力が高く、様々なこ
とを実行に移せるだけのパワー、資金力を持っているだけに、こうした持
たないものの苦労など微塵も分からない。しかし、中小やベンチャーも含
めた猥雑さがないと、ビジネス、経済は活性化せず、経済が衰退すれば、
環境以外の所で別の問題が出る。

では、我われ企業人はこうした動きに対して、ビジネス、現場を知らない
者によるナンセンスな議論と無視していれば良いのだろうか。決して、そ
んなことはない。そうした態度でいると、こうしたナンセンスなことがま
かり通る世の中になっている。スコープ1、スコープ2、内部統制などの例
を忘れた訳ではあるまい。

分からない人間には、分かってもらうよう説明していくしかない。残念な
がら、現在、規格・規制を作る側の人間は、それを実行に移してしまうだ
けのパワーがある。

ただ、自分の視野ばかりに閉じこもっており、もう少し広い視点、長期的
な視点に欠けている。これは自分達に痛みが伴わないのだから仕方がない。
彼/彼女らに対抗するには、その懐に飛び込むしかない。こうした規格・
規制の場に参加し、いかにスコープ3、カーボンフットプリントをすべて
の製品・サービス、活動に適用するのが非現実、ナンセンス、人々の生活
に悪影響を与えるかを訴えていくしかない。

個々人が考えるには、あまりにも大きな問題と思われるかもしれないが、
これは本当に多くの経済活動、我われの生活に悪影響を及ぼすことになり
かねないものである。事業活動に携わるものならば誰もがスコープ3、カー
ボンフットプリントの動きを注視し、それらが誤った道に進みそうになる
のであれば、すかさず声を大にして、その誤りを指摘していく必要がある。

    
※以上は、掲載企業からの情報や一般に公開されている情報を基に、参考
情報として、弊社の視点で編集したものです。掲載企業との取引や契約に
ついては、あなたの判断に基づき行って下さい。掲載企業との取引や契約
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【編集後記】

最後までお読み頂き、ありがとうございました。


確かに、地球から見れば、人間が一番いらない存在なのかもしれません。
だからといって、自分で自分の首を絞めるような衰退の道を選ぶのはどう
かと。

カーボンフットプリントのようなナンセンスではなく、地球環境負荷の削
減と経済を両立させるような良い方法を我われは早急に見つけていかなけ
ればなりません(山本)

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