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【環境調達.com 第33号 2010.2.11】
FSC認証から環境認証が抱える問題を考える

【環境調達.com 新着トピックス】

あなたはFSC認証をご存知ですか?

FSC(Forest Stewardship Council、森林管理協議会)は、環境影響や地
域社会、先住民の権利などを含む基準に沿って、森林が管理や伐採され、
その森林から切り出された木材を使って生産・加工が行なわれたのを認証
する国際機関です。こうした制度は森林認証制度と呼ばれ、森林の適切な
管理と、そこから切り出された木材に証明(認証)を発行し、ラベルをつ
けることで、消費者が環境負荷低減に配慮した木材を選ぶのを支援する制
度で、日本では、FSCの他に、もう一つの国際認証PEFC(Pan European
Forest Certification Schemes、汎ヨーロッパ森林認証制度)と、日本独
自のSGEC(Sustainable Green Ecosystem Council、「緑の循環」認証会議)
などが普及しています。

FSC認証は、あまたある環境認証の中でも、(1)サプライチェーン管理、
(2)実効性、(3)新しい価値提案、(4)認証の乱立といった非常に難しい問
題に取り組んでいる認証の一つです。今回は、FSC認証を例に、環境認証
をめぐる問題について考えます。

(1) サプライチェーン管理

環境負荷の低減には、目の前のモノだけで考えるのではなく、その部品や
原材料、製品およびその部品、原材料の製造工程、それらの物流など、そ
の源流に遡ってサプライチェーン全体で考える発想が必要です。RoHsや
Reachといった物質管理、カーボンフットプリント、フードマイレッジな
どが同じ考え方に基づくものです。

また、たとえメーカであっても、製造後の流通、使用時、メンテナンス、
廃棄時のライフサイクルでの環境負荷も考える必要があります。

サプライチェーンやライフサイクルでの考え方がないと、確かにリサイク
ル品だけど、その再生過程で新規品を利用するのに比べ多大なエネルギー
を掛けている、地産地消だけれでも、零細農地を保護して作っているため
に、石油の使用量に換算すると、輸入品よりも余計にエネルギーが使用さ
れているという本末転倒な事になりかねません。

しかし、素材から部品、製品のサプライチェーンをトレースする、製品の
流通から廃棄までのすべての利用状況をトレースするというのは多大なコ
ストが掛かるため、環境負荷低減のサプライチェーン管理、ライフサイク
ルアセスメントの取組みは、まだ研究段階のものが少なくありません。

FSCでは、森林に対する認証の他に、認証された森林から生産された木材
の加工・流通プロセスで、認証された木材が非認証のものと混ざらず、区
別されて取り扱われているかを確認します。

そのため、店頭にFSC認証のついた製品を置くには、木材を提供する森林
だけでなく、加工、組み立てなど製品の製造に関わるすべての会社がFSC
を取得していないと、最終製品にFSC認証を付けられない仕組みになって
います。

これは、認証を普及する上では大きなハードルとなりますが、サプライ
チェーンでの管理を行うには不可欠な事です。FSCは、実際にこうしてサ
プライチェーンでの環境負荷低減を担保する仕組みを作っています。

(2) 実効性

認証には、審査内容、審査基準、継続性、偽装への対策など、その実効性
の問題が常につきまといます。どんなに厳しい認証でも、認証取得後、ほっ
たらかしでは、その会社が今でも認証の審査基準に適った行動を取ってい
るかが分かりません。

また、書類審査のみというのは明らかに問題がありますが、現地現物の確
認を行ったとしても、どうしても一過性、サンプルでの審査となりますの
で、悪意をもって偽装が行われた場合、それを摘発するのは難しく、偽装
が行われた場合に、資格剥奪以上の何らかのペナルティを課すようにしな
ければならないでしょう。

FSCでは、毎年、出荷元と出荷先のFSC認証材の取引量が整合しているかや、
現物管理のサンプル検査などを含めた維持審査が行われ、継続的な取引が
認証基準に合致している事を確認しています。ここで、重大な違反や違反
の改善が見られなければ、認証の使用権が剥奪されます。

FSCは、先に述べたサプライチェーン全体で環境負荷低減がなされている
事を管理する仕組みや、継続的に取引を監査する取組みが評価され、WWF
からはあまたある森林認証の中で唯一の推奨認証となっています。また、
古紙偽装の後、官庁の紙でFSC認証品を採用する動きが広がっています。

(3) 新しい価値提案

FSCが取り組んでいる課題は、省資源や省エネルギーと異なり、森林保全
や先住民の権利など、消費者に直接経済的メリットが生じる課題ではあり
ません。

温暖化ガス削減を中心に環境負荷削減に関心が高まるにつれ、最近では、
森林保全や先住民の権利の他にも、生物多様性など、消費者に直接経済的
メリットが生じない課題にも目が向けられるようになってきていますが、
まだまだ、広く価値として認められ、それに対する対価が支払われるよう
になっている訳ではありません。

認証もビジネスの側面があります。通常、各種認証の取得・維持にはコス
トが掛かります。取得する側から見れば、コストが発生するので、それに
見合ったメリットがなければ、取得に動きません。

そうした中で、FSCのように大義はあるが、自分への直接的経済メリット
がないような認証では、その普及は容易ではありません。難しい課題では
ありますが、それぞれの認証が認めようとするものを、価値として消費者
に認めてもらえるようにする事、これは各認証、特に、直接経済的メリッ
トが生まれない認証では、特に重要です。

(4)認証の乱立

森林認証は、FSCとPEFCの二つの国際認証が世界的に広がりつつあります
が、各国・地域レベルでみると、インドネシアのLEIや日本のSGECなど、
それぞれの国・地域で認証制度が乱立し、特徴や違い、環境負荷低減に対
する有効性を確認するのが難しくなっています。

これは、森林認証だけでなく、多くの産業分野の環境認証に共通する課題
です。

認証団体には、サプライヤが業界論理を守る、行政や学者などの既得権益
者が自己の権益保護、官僚の天下りの受け皿といった目的で組織したと見
られるものも散見されます。

優れた認証団体の取組みは、環境負荷低減の取組みに対する審査・監査コ
ストを下げる事が期待されます。しかし、何れの認証も、審査内容や基準
が厳しければ普及させにくく、審査を厳しくできないという矛盾を抱えて
います

また、認証は、個人の様々な資格がその人の能力を必ずしも保証しないの
と同じように、認証を取得した各社の仕事の質を担保するものではありま
せん。日本では、個人の資格は軽視するのに、認証は偏重する傾向が見受
けられます。この辺りは、個人ではなく、お上のお墨付きに頼る日本の文
化の問題なのでしょうか。

審査・監査は、価値を生むものではなく、コストです。環境負荷の低減な
ど、社会的大義に取り組む団体は、正しい事をやっているからと自己を正
当化しがちですが、目的がいかに崇高でも、成果を生まない事業、組織で
は、その役割を果たせず、他の仕事ができる人間、組織に任せた方が、そ
の目的も果たされます。環境認証団体には、それぞれがここに挙げた課題
に対して、自分達なりの回答を用意して頂きたいと考えます。

雰囲気で買う個人の買い物では、認証は有効かもしれませんが、企業の買
い物では、認証はあまり頼りにすべきではないと、弊社では考えます。企
業の買い物では、QCDMは自己責任で評価しなければなりませんし、実際に
多くの企業が、その評価に多くの工数を掛けています。その工数の肩代わ
りができる認証は、現在、非常に限られています。また、認証にその工数
を肩代わりさせる時には、認証そのものの審査・管理能力の評価が絶対不
可欠ですが、それをやっている暇があれば、直接、サプライヤを評価した
方が効率的だったりします。

サプライヤに余計な認証取得を求める事は、購入品の価値にまったく影響
を与えないコストアップ要因であると共に、誤った基準で足切りを行い、
競争環境を限定してしまったり、取引すべきサプライヤとの接点を断って
しまうという二重の意味で、企業の調達・購買にとってはデメリットが大
きいと考えられます。

※以上は、掲載企業からの情報や一般に公開されている情報を基に、参考
情報として、弊社の視点で編集したものです。掲載企業との取引や契約に
ついては、あなたの判断に基づき行って下さい。掲載企業との取引や契約
についてのトラブルについては、弊社では一切責任を負いませんので、あ
らかじめご了承下さい。

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【編集後記】

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

何だか、今回は認証に対してかなり辛口のコメントになってしまいました。
背景には、日本では、企業も個人もすぐに規制、認証、ランキングなどの
権威に頼り、自分で物事を評価しない事への危機感があります。

個人的には、日本は個がますます弱くなる方向に向かっていると思います。
趣味でサッカーをやっていて思うのですが、個を強くする事を考えずに、
すぐ組織戦術うんぬんに逃げる組織・チームは勝てません。なんだかんだ
いって、1対1の局面で状況を打開できないと勝てないというのが、仕事で
もサッカーでも言えると思います。

認証そのものの考え方は必要だし、有効な使われ方もあるとは思うのです
が、現時点では、機能しているものが少ないと言えます。

一つには、機能していない認証を淘汰するメカニズムがない事があるので
はないでしょうか。(山本)

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